. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 発言録

各氏の発言要旨は以下の通り。

中国側司会: 朱英璜氏(前中国日報社総編集)

 110821 d 02皆さま、こんにちはメディア分科会の前半を開始します。

 東京大学の高原先生と私が司会をつとめさせて頂きます。

 基調講演で世論調査結果について、ご報告いただきます。日本側の基調報告は工藤代表自ら行います。毎年定番が工藤先生。毎年の世論調査のまとめ役です。世論の変化の過程について詳しいです。中国側からは劉江永教授です。国際関係の専門家です。おひとり10分でお願いします。その後、おひとり5分ほどコメントをいただきます。中国側は3分以内で、日本側は4分しかないということになります。その後1時間のディスカッションをしたいと思います。このフロアの皆様も参加していただいて結構です。質問を紙に書いて渡していただいてもいいし、直接手を上げてもかまいません。

 今回初めてですが、にぎやかな分科会だったと聞いています。賑やかに盛り上げていければと思います。中日関係の対立を解決できるよう頑張っていければと思います。

日本側司会: 高原明生氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 110821 d takahara先生がおっしゃった内容について100%同意します。しかし、楽観していません。なぜなら、ここにいる人たちが共通の「どうしたら日中関係を発展させることができるのか」というのがあります。中国の共産党に学びたいと思います。なぜなら、彼らは相互批判だけでなく自己批判もしていると。非常に客観的に、冷静に話しあう、共通の目的のために、自分をも批判します。これが大事だと思います。考え方の違いを理解します。なぜ、考え方が違うのか、なぜそう考えるのか、というレベルまで掘り下げて考えることが重要だと思っています。相手の立場に立って考えることが大事です。特に通訳の立場に立って考えるのが大事です。これから発言される方は、ゆっくり話していただければと思います。

劉江永氏(清華大学現代国際関係研究院副院長、教授)

 110821 d 03パワーポイントを使っての発表となります。

 皆さんこんにちは。本日、第7回北京-東京フォーラムのメディア分科会で報告する機会を与えて頂きまして大変光栄です。それでは、2011年の中国側の世論調査結果を報告いたします。今までフォーラムに7回とも出席させていただきましたが、メディア分科会に参加するのは初めてです。高原先生と同じく、中日友好委員会のメンバーです。工藤さんとも古い友人です。

 調査の結果について報告しますが、要点だけを報告させていただきます。唐家璇氏(前国務委員、中国国際経済交流センター顧問)があちらの国の国民感情、メディアがコミュニケーションの中で果たした役割についてお話されました。私はできるだけ客観的な立場で解説したいと思います。発表の前に、零点コンサルティンググループに御礼申し上げます。ご協力いただいた会社です。

 今回の調査の特徴は、まず中国の一般市民が抱く日本への印象は3年ぶりにマイナスが増えたということです。詳細な説明は省かせていただきます。調査する際に、大学生・教師についても同じような結果がありました。2008年以降に中国の一般市民と若い国民の日本に対する好感度と親近感が上昇しつつありました。しかし、昨年から急に下がりました。詳細は資料をご覧ください。その原因は何でしょうか。両国民の相手国に対する感情、悪くなった理由はデータから分析しますと、中国側は歴史問題、歴史に対する認識問題です。一般市民は、このことについての意見を求められたたとき、74.2%の人が歴史問題を取り上げました。しかし、大学生の間では46.3%の人しか歴史問題をあげていませんでした。両者あわせて86.1%の人が、日本側が歴史問題について正確に認識していないとしています。現実の問題をより重視するようになりました。歴史問題よりもそれに対する認識が重要です。

 日本に対するマイナス・イメージのもう一つの理由は、7割ぐらいの人たちが侵略戦争のことをあげています。また、若い人達は現実問題をあげています。次に、中国の若い世代は、一般の人より厳しく中日関係を見ています。一般の人は半分以上が中日関係は良いと見ていますが、大学生はそうと思っていないようです。よいと思う人が昨年より10ポイントも下がりました。3点目、今回の調査でもうひとつのことがわかっています。中日関係はいろいろありましたが、依然として両国にとって重要であることがわかりました。中国側の調査でわかりましたが、少なくとも8割が重要であると見ています。10年後も依然として重要であると考えています。このことからも中国民衆の大方の見方がわかると思います。

 その特徴を申し上げますと、まず、尖閣諸島が中日関係を阻害する最も大きな問題となっています。今までは、台湾問題でしたが、昨年の9月に漁船衝突事件がありました。しかし、このことが長期的に中日関係を阻害するべきでないと考えています。また、中国の民衆は米国が中国にとって一番の脅威とみています。次は日本、インド、ロシアです。間違っていたら資料を見て下さい。次に日本がなぜ脅威かというと、歴史のことと、歴史を正確に見ていないことです。両国関係をよくするには、過去の戦争が侵略戦争であり、起こしたことに日本が反省することを文章の中に書きました。極東軍事裁判、南京大虐殺では、一部正確に認めていない声がまだあります。3番目の理由としては、米国と日本が同盟国で、日本が米国にいつも追随しているからです。昨年日本は新防衛大綱を発表し、その中で南西諸島の防衛強化を打ち出しました。今回の調査では、中国にとって最大の脅威国は米国で、次に日本になっているのです。

 今回の世論調査で、中国の民衆が、複雑で様々な課題が存在している情勢の中で、前向きな意見が欲しい、そして中日関係を推進したいという思いがありました。時間になりましたので報告をここまでにしたいと思います。

朱英璜氏

 龍先生、時間厳守、ありがとうございました。世論調査は毎年行われていますが、今年の結果は数多くの皆さんの注目を集めました。なぜなら、今年は相手国に対する好感度が低下したからです。大変心配で、考えさせられる結果です。このフォーラムでは、この結果についても反省したいと思います。

工藤泰志(言論NPO代表)

 110821 d kudo日本側の発表をさせていただきます。今、言われたようにこの1年間で劇的に感情が変わりました。マイナスの方向にです。お互いのイメージ、日本はもともと中国に対するイメージが良いわけではないですが、今回8割がマイナス・イメージを持っています。この数字というのは、これまでの最悪の数字になっています。今までは、08年の餃子事件を除いて改善されていましたが、これは中国も同じでして、7割くらいが日本にマイナス・イメージを持っています。これも10ポイントくらい増えています。日本よりはポイントが低いのですが。

 なぜここまで悪化したのかというと、尖閣問題に対する両政府の対応について、マイナスのイメージにする人が多いということです。思ったことは、プラスに評価している人たちの理由を見ていると、日本における震災のときに助け合っているというのに感動した中国の人が半数近くいらっしゃいます。一方で、日本人は中国からいろんな支援をいただいたのでプラス・イメージというのは2割くらいになりました。日本側は中国に支援されていることをあまり知らされていないです。中国の人は、日本人の助けあいの精神をプラスにとらえている人は多いのですが、全体の認識の改善には繋がっていなかったのです。もったいないことだと思っています。こういう危機のときこそ助け合っている人類普遍の心に対して知ることができればよかったです。そういうことよりも尖閣問題の認識の方が大きかったです。

 なぜ認識が悪化したかというと、1つは尖閣事件に対する日本政府の対応、2つは福島原発における日本政府の対応です。この2つが大きなインパクトでした。

 日中関係の現状に対してマイナスになっているのに懸念しています。日本では50%が日中関係を良いとは思っていません。逆に中国の人は50%が良いと思っています。しかし、この1年でいうと、どちらも20ポイント悪化しています。今まで日中関係に関しては、悪いと思っている人は27%しかいなかったのですが、いまは半数を超えてしまいました。昨年は70%の中国の人が関係が良いと思っていました。数字上は逆なんですが、方向としては悪化しているということです。悪化の理由を直接問う質問はありません。しかし、日中関係の障害になるものは何かということに対して、圧倒的に多くの人たちが領土問題をあげており、昨年紛争があるということを目に見える形で知ってしまったというのは大きい印象を与えています。マイナスに振れる動きが出てしまったと。しかし、そうでありながら、日中関係の重要性に関しては、8割近い人が日中関係は重要だと思っています。日中首脳会談についてはお互い半数が評価できないとしています。では、今何を議論すればいいのかというと、尖閣列島などの領土問題が挙げられています。領土問題が課題として認識されています。

 基本的な構造としては、お互いの交流が圧倒的に少ないのです。お互いの認識をメディアに依存する構造となっています。悪い報道があるとそれが共鳴してどんどん悪くなります。領土問題と原発問題があって悪い方向になっていると。

 気になるところがあり、お互いの交流が無いから交流があれば改善するというものがありました。例えば、05年では7割が今の日中関係が悪いと言っているのですが、今は半数となります。お互いの交流を増やすことで改善につながると思っていました。しかし、気になっているのは、知ることによって違いを認識して、お互いの不安や理解できない感情があるのではないかと思いました。例えば、中国人が日本に持つイメージは、05年では50%以上が軍国主義だと。これは情報を与えれば解決するメカニズムで、現在では30%に減っています。しかし、日本人が中国をどう考えればいいかというと、社会主義や共産主義というよりも、絶対主義や覇権主義というふうに、どう捉えたらいいかわからないということになってきています。お互い知りあうだけでなく、お互いを理解する、課題を共有して乗り越えていくという、ある意味覚悟を持ったコミュニケーションが必要になるのではないかと思っています。

 今回の地震の問題は、中国の人たちにも衝撃でありました。原発に対して廃止していきたい人が半数以上いますが、中国の人たちも増やすことはしたくないというのが7割くらいいます。

 靖国参拝問題について、それを容認できない声が増えてきています。日本にとってしっかり考えなければならない。一方で経済的にもWin-Winであったが、脅威であると思う人が増えてきました。感情的な悪化というのが色々なところに悪影響を与えています。これをきちんと解決していく動きが必要だと思っています。

高原明生 氏

 恋愛中の時は相手の裏が見えないんですけど、結婚をすると相手を理解できるようになり裏が見えてきます。それをもう一つ乗り越えて大人の関係になるのではないかと思いました。もう一つは、劉先生のご報告からお互いの印象が悪くなったことについて数字で報告されました。メデイアがどういう役割を果たしたのか、このセッションを通して真剣に考えてみたいと思います。

朱英璜氏

 中国人もよく言いますが、好きになるのであれば相手の欠点も好きになれると。それでは報告結果について感想をいただければと思います。

劉沢彭氏(全国政治協商会議常務委員)

 110821 d 04本日、日本の皆さんとお会いできて、一つのことを話したいと思います。3月の東日本大震災について、この場を借りて、深いお見舞いを申し上げます。ある写真を見ました。その写真を見て、福島第一原発事故でも、日本の民衆が秩序を保つ精神を感じました。どんな災害も必ずや乗り越えられると。今回の調査結果に戻りますが、相手国民の好感度の低下が最も重要だと思います。考えてみれば、中日の間に何もトラブルが無ければ先ほどの例えのように恋人同士のように仲良くできます。もちろんこの2つの課題は、すぐには解決できないですが、時間が経つことによって解決できると思います。ですから、現在の感情の変動は正常なことであると考えており、将来的には変わっていくであろうと思います。完全に変わるまではもちろん時間がかかると思います。

 もう一つ、中国では90%の人が日本に行ったことがないと。北京大学の学生に会いました。彼は日本人は非常にいいですと。なぜなら、彼は日本に行ったことがあるからです。調査結果では多くの人たちが日本に行っていないんですね。ですから、民間ベースの交流を強化しなければならないと感じました。また、80%以上の人が中日関係を重要視しています。もう一つ、共にマスメディアに依存して相手国の情報を吸収しています。このことからメディアが果たす役割がいかに重要かということが分かります。この数年間、中日の文化交流は後退しました。映画界がそうです。戦争時代を描く映画がありましたが、今は民間交流を描く映画がほとんどありません。ですから、マスメディアとしては、やはりいかに民間交流を推進するかという話題をめぐって話し合ってもらえないでしょうか。特にメディアの果たす役割について、一度専門的な調査をやってみるのも面白いです。昨日、明石さんがおっしゃったとおり、大きくない話題なのに誇大していると、逆に、大きな話題を報道していないケースがある。こういう報道が大衆を方向付けているんですから。メディアのみなさんに真剣に研究・分析してもらいたいと思います。こういう点についてもディスカッションしたいです。

朱英璜氏

 さきほど劉さんの説明の中では、ジャーナリストたちが中日関係の見方について、アンケート項目に入れていただけませんか?

西村陽一氏(北京・清華大学客員教授 前朝日新聞社東京本社編成局長)

 110821 d nishimura今日の午前中のセッションで繰り返された言葉。「脆弱性」と「強靱性」。例えば、蓮舫さんからは、震災時の日本の精神的な強靭さについて、日銀の山口さんからは金融システムの強靭さについて、お話がありました。ありとあらゆる関係につながっています。当然日本と中国の関係にもなると。弱さがでてきた時に、いかに元に戻すかという復元力が、その国の成熟度を見る指標になります。例えば、クリントン元米大統領が、中国に対してきつい表現で選挙キャンペーンをやったあとに、歴代大統領の中で最も深い関係を築こうと努力されました。小泉さんも靖国参拝のあとに、戦略的互恵関係を進めようとした。今回の世論調査で表れた日中関係の脆弱さが露呈している。これは一時的なものなのか、復元力が働くことなのか見ていかないといけないと思います。今回の特徴としては、領土問題が突出していると、世論のムードに与える影響が大きいとしています。今回が今までで領土問題で最も激しくぶつかった問題であると。領土問題が浮上した点としては初めてであり、弱さをプッシュした結果となりました。中国側は、政冷経熱、政治はいかに冷たくても、経済関係は冷めないようにしようという外交をやってきました。今回は、中国の場合は、政冷経熱というクライシス・マネジメントを捨ててレアアースの問題に拡散しました。これは中国外交の失敗だったのです。レアアースは非常に重要な問題なので、カウンターアクションとしては失敗だったのです。観光客を止めたり交流関係を止めたりという問題が発生しました。日本の場合は、政治は過渡期にあったため、尖閣事件というのは代表選の際の事件だったのです。菅政権が外交として対処することができない時期でありました。基本的には日本と中国の問題があります。

 メディアの人間として、中国の海洋進出について、非常に焦点をあてがちです。なぜなら、中国のパワーが気になるので焦点をあてがちです。

馬為公氏(中国国際放送局副総編集長)

 110821 d 05先ほど劉氏は今回の同時通訳を一番素晴らしいとおっしゃいました。王小燕さんが同時通訳をしています。この分科会に参加して、子どもの喧嘩を分析したように感じます。子どもの喧嘩というのは、彼がアメをとったから嫌なんですと。中日関係も同じような理由を分析しています。相手国に対する好感度を分析するのを、簡単にとらえすぎているのではないでしょうか。

 日本は20年間で17人の首相が変わりました。両国関係は、アジアの未来は中日関係なんです。先ほど領土問題の話も出ましたが、ここ2,3年間の間に出てきた問題ですか?いいえ、もっと前からあった問題です。日本にとっても中国にとっても、そのときの政治家がうまく処理してくれたのです。最近の指導者はこういうところの対応をうまくできていないです。この領土問題は両国民の相手国に対する感情を阻害している一番の問題だと思います。また、両国民は相手国に行っていないことも大きな問題なんです。言葉が通じないから行かないんです。私も日本語がわからないから行きません。国を移動させることもできない、中国が日本を嫌いでもそこにあるわけです。引っ越すわけには行かないから仲良くするしかないんです。政治経済に関する会議に参加しました。産経新聞の中国に関する報道はほとんどマイナス報道なんです。インターネットに乗せている中国の報道は全部マイナスのものでした。3.11の大震災のことについて、東日本大震災の後に、中国はすぐに救援隊を派遣したことを日本人のほとんどが知らないんです。四川大地震の時、日本人は黙祷を捧げました。中国は全国に報道しました。救援隊が何人救出したかは重要ではありません。日本人の救援隊が来たという事実です。私たちも同様に、救援隊・救援物質を送った、首相が訪問しました。我々メディアはこういうことを伝える役割を持っています。1つのことについて騒ぎ立てるのはよくないです。メディアはこのように重要な役割を持っています。

劉 氏

 晩餐会で日本のある方から聞きました。震災中、中国の研修生を救って、自らの命を捧げた日本人がいました。しかし、これは日本で報道されていないと。信じられません。こういうことは、非常に大事なニュースです。日本では特にこういうことを報道していないということを聞いて驚きました。

高原明生 氏

 このニュースは、日本のメディアでもかなり大きく報道されています。

加藤 青延 氏(日本放送協会放送総局解説主幹)

 110821 d kato佐藤水産の方々が研修生の皆さんを助けて、逃した佐藤さんという専務が亡くなったということについては、NHKの取材です。当然私たちも報道しているんですけれども、報道していなかったとされててしまうことに危機感を持っています。

 世論調査で3つ大きな衝撃を受けています。1つは日本と中国の相互感情が悪化したということ、2つは日本人の大半が、テレビニュースを通して中国を知っていると回答しているにもかかわらず、日本のメディアについて信頼できるか客観できるかについて、25%しか信頼できると思っていないと答えています。私たちが一生懸命報道を出していたとしても、信頼されていないということに非常に危機感を持っています。餃子事件の際、悪質な犯罪と同じだと思います。日本中が福島は危ないという状況になっていますけれども、安全宣言をやるしかないので政府はそういう方向に進んでいますが、なかなか伝わらないのです。

 餃子事件があったがために、世界でも安全であった中国食品のイメージが悪くなってしまいました。

 非常に残念なのは、1978年、鄧小平副総理がこの問題を棚上げにしようよといったことを伝えましたが、日本政府は明確な反論をしていないけれども、そういう経緯を知ることがないまま、理解が進んでしまいます。

 尖閣事件で、最初にリーク映像を送った先が、CNNという海外メディアでした。ここが黙殺したので、動画サイトに掲載されてしまいました。インターネットがテレビやマスメディアの信頼を飛び越えてしまっています。我々テレビ局報道が、インターネットに振り回されてしまった苦い思い出でした。非常に多くの方が、日本の中国報道は客観的でないと考えており、どういう点で客観的でないのかもう少し考えてみたいです。

王 芳氏(人民日報社国際部副主任)

 現在、海外の生活が長かった、人民日報の毎日の国際報道の企画の担当をしております。ルーチンと世論調査に結びつけて、2点お話します。この世論調査はこのような所に意義があると、大変役に立つものと思います。去年の報告を見て、今年と見比べて2点お話します。好感度の低下ということは10ポイント近い下降になりました。中国の市民が対日本の好感度が10ポイント近く低下した。日本では同じ、日本のインテリ層が中国に対する好感度が11%も大きく低下しました。つまり、レベルの差であります。全般的な10%で見ると、中日関係における位置付けは、去年と比較して10%くらい低下が見られました。もう一つ交流によって、関係改善できるかについて、中国は7割以上、日本は8割の結果ですが、昨年に比較して下がりました。ですから民間交流の認知度が落ち込んでいるということは懸念せざるを得ないと思います。

 2つ目に、メディアの対応について、去年に比べて、メディアへの期待が大きくなりました。4割以上の上昇となっている。つまり、脆弱性、安定性に欠けるということです。メディアに対して期待が高まるということです。メディアがそれだけ大きな責任を持っているということです。このような対話をする場が増えつつあります。なぜメディアに期待が集まっているのか?インターネット、ニューメディアの発展です。今、ネットユーザは5億人になっています。3/11大地震の影響で、今回の影響はプラスのものがありました。助け合いの精神という良いことがありました。国際世論に関しては、必ずしもそこが結びついていない。これをうまくPRできれば、世界からの見方がかわるかもしれません。中国のメディア、とりわけネットでは、震災の深刻さだけでなく、日本人の精神、日本民族が助け合いながら秩序を守っていたということが多かった。これは初期に関してです。その後は、原発の話が多くなってきました。お互いの認識が十分でなく、相手方がどういう報道をしているのか、共有できていないのではないかと思います。突発的な事件が起きたとき、客観的な冷静な報道が少ないので、こういう交流の場を通して議論できればと思います。

下村 満子氏(ジャーナリスト 前経済同友会副代表幹事) 

  110821 d shimomura最後なので皆様がおっしゃらないアングルでお話をしようと思います。メディアに携わっている方の調査をすべきだとおっしゃいました。賛成です。今回の世論調査には2年目から関わっていますが、今回の結果を見まして、色々衝撃を受けました。メディアの責任というのは大きいのではないかと思います。午前中のセッションでいろんなメッセージをいただきました。印象に残っているのが、「和すれば栄え争えば滅びる」という言葉が印象に残っていまして、一国単位の国益追求が一番大事という発想自体が非常に害になってきているのではないかと思います。世界が大変狭くなってきていて、全部繋がってきている。人間の体のようになっているのではないかと思っています。しかし、ジャーナリスト自身が大変古い、国益、国益と言っているから、何かあると過剰に反応してしまう。両方で増幅効果を生み出してしまっている。ジャーナリストがまず世界観を変えて行かないといけない。全世界を自由行き来できているのに、なぜ1国単位で物事を考えてしまうのかと、国益を追求すると、最終的に地球益になる。自国のみ良ければいいということはできないのだと。私は日中のジャーナリストが物事の発想の転換をしている時代、一つの世界、一つの村、一つの地球ということを一人一人が考える。

 伝統的なジャーナリスト、twitter,facebookとかが、どのような影響を与えてきて、同対処していくべきなのか、ジャーナリストとして考えていくべきではないかと考えています。

高原明生 氏

 経済は国境が無い状況になっていますが、政治には国境がある。国家と市場の狭間にいるのがメディアだと思います。こういう点を真剣に話し合わないとならない。

程 曼麗氏(北京大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院副院長)

 110821 d 06中国の世論調査に表れた相互印象の低下要素について述べさせて頂きます。これまでと違う結果がでました。国民双方への印象の低下ということです。一点のみ疑わなくてはいけないのは、7回調査して避けることができないこととして、構造的、戦略的問題であると戦略的な構造的な矛盾、歴史・領土の問題が含まれています。長期的な問題です。短期間で解決する問題ではありません。例えば、歴史問題、共同研究グループを立ち上げました。これは学者レベルでの努力にすぎません。一般レベルにまではなりません。領土の問題に関しましては、枠組み的には、オペレーション段階にまで来ていません。両国関係に影響するのが領土問題であるとしています。安全保障に関しても、信頼し合える関係になっていません。相互信頼と理解が理想です。どうすればいいのか? とりわけ大国関係というのは複雑なものであります。利益がオーバーラップしているものも大変多いです。報道する際の取捨選択があります。一部のメディアが、センセーショナルに報道しているようないざこざの中で発展していくわけではありません。利益が変わり続けているので、両国関係より成熟的、より理性的に、矛盾があることを踏まえた上で、どう信頼関係を構築することができのか考える必要がある。夫婦になった以上は仲良くやるしかありません。 

朱英璜氏

それでは、質疑応答時間に入ろうと思います。できれば2、3分以内にしていただければと思います。自由にご発言下さい。2つのテーマを中心にやりたいと思います。今回の調査結果をどうみるか、マスメディアの視点からこういう結果になる原因は何なのかと。セッションにおいては、メディアの役割についてさらに話し合います。

【質問】 清華大学の松野さん(野村総合研究所から派遣)

中国においてのメディアの役割について、中国で対話することがたくさんあります。あるとき聞かれたことで非常に大事なことがあります。日本のメディアの報道していることは正しいことなんですか? 正しいと思っていますか? 私は、日本のメディア倫理に基づいてやっているので概ね客観的だけれども、それを判断するのは日本人です。どう考えるかという判断材料を提供している。だから、日本人には判断力がありますと言いました。逆に「あなたたちは、マスコミが言っていることは正しいか正しくないかというお話しかできないのですか」と。教育とか啓蒙ではなく、これだけ成熟した市民に対して、判断材料を提供しないのでしょうか。正しいか、正しくないかという情報だけなのか。

王 芳氏

 これに関して、メディアがより重視しているのは客観性です。今は大変多元的な報道をしています。メディア自身の理念に密接に関わっています。経済の専門誌や一般紙で立場が違います。どこのメディアにせよ客観性が最も重要です。しかし、ニュースの材料を選ぶとき、そのメディアの考えが見えできます。正しく報道しているのかと問われると、客観で公正だとしています。私たちメディアの交流は成熟していません。突発的な事件が起こった際は、難しいものがあります。突発的な事件に備えられるメディアの交流が必要です。自国の利益に寄せざるをえない状況があります。それを前提にしつつも、相手の声に耳を傾けるのが重要になってくる。例を挙げます。8月16日、フィリピンに関する情報を報道しました。経済のエネルギー開発3社の問題、つまり、領土問題についてです。どのように報道すればよいか議論しました。EEZでの問題です。その3社がAFPの報道でした。中国とフィリピンの問題で、中国の企業3社も参加するとAFPが報道しました。これが本当かどうか悩みました。私たちが調査した上で、本当に正しいかどうか、その上で記事にしています。AFPの報道が正確さにかけているから調査の結果を発表しました。情報を入手してから、鵜呑みにして出しているわけではありません。

【質問】 中国の方

 先ほど日本の方が出した質問は非常に面白い。報道は客観的でなければなりません。コミュニケーション学の基本から少々離れているのではないか。報道は確かに中立的な立場に立たないといけません。どれを報道するかしないかは、選択肢になってきます。その枠組みを設置する。ここで、一つ価値の方向付けにもなります。新聞界の、ジャーナリスト界の一つの常識であると思います。報道するかしないかではなく。

下村 満子氏

 去年もしましたが、客観とは一体なにか?正しいか正しくないかは何か?ニュースという のは、どのニュースが取材する価値があるのか?という判断は既に価値判断が入っています。ニュースの選択のところにその国、個人の価値が入っています。真実ということは難しくて、皆同じ部屋で同じ場所にいても真実というのは曖昧です。人の目によって異なります。ベトナム戦争も、見る立場によって全く内容が異なってきます。

高原明生 氏

英語ではメディア・リテラシーと言う言葉がありますが、非常に重要。メディアへの接し方を注意しなければならないというのも、メディアの役割の一つなのではないかと思います。

【質問】 山木氏

 日本のメディアにおりまして中国語と日本語で情報発信をしています。40年くらい日本の通信社におりましたので、今のお話の内容はよくわかります。今回の原発、尖閣列島、私の自戒を込めて申し上げますと、読者迎合・視聴者迎合になりやすいです。新聞の1面トップも政局の話、これでもかと感情に訴える報道をする傾向があります。日本は不況で広告費が取れないことや、新聞社も読者が少なくなっているという背景があり、購読率を高めるためには読者に喜ばれるものにしないといけない。尖閣列島の事件も、これでもかと何度もビデオを報道しました。原発に関しては、水を空からかける際中国のものを使っていた。しかし、アメリカから報道するなという背景があった。アメリカに対してメディアが扱う量が多くなり好意的になる。中国の方に聞きたいのですが、読者迎合というのはあるのでしょうか?広告費のお悩みはないのでしょうか?そのへんの悩みをお聞かせいただきたい。

馬為公氏

 世界に共通している問題を指摘されたと思います。メディアの社会責任と商業的利益の問題です。情報の受け手、伝え手に関しては近代的になっています。従来の古いメディアにだけ情報が発信されるわけではありません。中国のマイクロブログで非常に早いスピードで伝わりました。従来のメディアよりも。こういった情報発信というのは、利益を追求しているのではなく、写真を撮って文章を入力して早く投稿することでした。この7回のフォーラムでは、私もマイクロブログを使いました。そうすると、素早い反応が返ってきます。どれだけメディアのスピードが早いのかということです。中国では、情報の送り手が限られている、世界でも限られた国だと思います。世界では、そこが変わってきています。

 重要なニュースを報道する時に、ワイドショーのように報道することについて私はとは良いとは思いません。鉄道事故の際も笑顔で報道するのはおかしいことだと思います。無視してはならない社会責任だと思います。

司会

時間の制約上、ラストクエスチョンとさせていただこうと思います。

【質問】 慶応大学の中国人留学生

 日本に住んで感じたのは、今回の世論調査の結果は良くないが、私は日本が好きです。私はこのような活動に参加することができて、かつて、日本で藤沢キャンパスの選挙で成功したんです。留学生としては、嬉しいことです。福島の子供たちが放射能の関係で外に出られないと、富士山の麓で一緒に遊びました。感じたのは、誰もが私のことを外国人として見ていません。一つのことをやるためにやる仲間として見ているのです。中日関係が悪くなるという考えは必要ないと思います。外国人を受け入れる気持ちがあると思います。日本のメディアはあまり信頼されてないという話がありましたが、メディアのハードルは高すぎる感じがします。自分の身近にある出来事、仲間同士の出来事であればより信頼するんですね。NHKは、留学生のために、チャンスを与えてください。CCTVは交流のプラットフォームを作ってくれないのでしょうか。交流すればこういう問題は解決すると思います。日常会話の交流だけで良いと思います。よりお互いの国を知るようになるのではないでしょうか。このことについて、日本のメディアについて聞きたいです。

高原明生 氏

日本でも、facebook,twitterにしても、ものすごい勢いで成長しています。地震のときに、Googleのパーソナルファインダーという地震で行方不明になった際に、情報を投稿する、探すということを実現する情報空間が成立したり、社内でもTwitterのアカウントを持っている人が増えています。伝達と同時にフォーラムを作ろうという流れがあります。不幸な事件があったけれども、ソーシャルメディアの情報発信が増えたということの中に、フォーラム機能を追加しようという流れはあります。

程 曼麗氏

 民間交流の重要性を指摘されました。第7回にわたって開催されたことが報道されたようです。近距離で触れ合うというのが、一番良い理解方法です。ただ、全員が全員そういうチャンスに恵まれるわけではないです。8割か9割の人がメディアを通して知るのです。昨夜のレセプションでも、日本のゲストに聞いた話で、中日双方に矛盾があることは正常です。これを問題にまで発展させてはいけないです。これこそ市民がメディアに出してくれた要求であると。これを問題として捉えるのではなく、頑張って行くべきことなのだろというべきです。

王 芳氏

 年1回だけでなくて、突発的な事件が起こったときに、問題が起きている期間中、簡単な世論調査を実施して、相互の国民に提供できるデータを。調査の頻度を増やして頂けないでしょうか。ニュースメディアの人数が少ないと思います。

程 曼麗氏

 技術的に何度もやれるかどうかは難しいかもしれませんが、インターネットのメディアは浸透しているのは事実で、そういう人たちに参加していただきたいと思います。

朱英璜氏

 もし中国側と日本側の研究機関が、事件について調査をすれば、報道が客観的になっているかどうか、研究分析するのは良いかと思います。中日間でトラブルが発生しないのが一番ですが、万が一起こった場合、比較分析を行うほうが良いと思います。調査の結果を重要視しているが、中日間で成熟期になっていないから、何かあったら一般市民の感情に反映されるんです。メディアとしてどのような責任を負うべきか、普通の参加者にしても、メディアに対して大きな期待をしています。午前中の会議で唐家璇氏も指摘したように、責任が特に大きいです。その責任を負わなければならない。報道を通じて相手国の事を知り、相互理解を深めることになる。両国民の好感度について低下していることについて、メディアはどうあるべきなのか、客観性というのは報道する際のモラルです。常にコミュニケーションをとって、相手の事実をはっきりさせて報道すれば、客観に基づくことになります。

 先ほど下村先生がおっしゃったように、中国のマスメディアは愛国心を報道しています。中日間で愛国心とはどういうことなのか、両国の友好を促進しなければなりません。

 マスメディアの社会的責任はまず、一般市民にマスメディアとしては、相手国の利益、世界の利益を考えて、両国のコミュニケーションを深めることがじゃないでしょうかと思います。

 中国のメディアも大分市場化されてきました。似ているところもあります。違うところもあるということがよく分かると思います。日本は、愛国主義から自由になりたいが政治に引っ張られることが違うところだと思います。

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