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メディア対話は、「両国関係の発展を支える国民間の相互理解をどう進めるか―健全な世論の喚起と言論の責任」をテーマに、日中合わせて17名のパネリストをお招きして開催されました。日本側・高原明夫氏(東京大学教授)、中国側・王衆一氏(人民中国雑誌社総編集長)、高岸明氏(中国日報社副総編集長)の司会で開催されました。日本側のパネリストは、加藤青延氏(NHK解説委員)、小倉和夫氏(国際交流基金、元駐フランス大使)、伊藤俊行氏(読売新聞東京本社編集委員)、江川雅子氏(一橋大学教授)、大野博人氏(朝日新聞論説主幹)、杉田弘毅氏(共同通信編集委員室長)、山田孝男氏(毎日新聞特別編集委員)の8名、中国側は趙啓正(中国人民大学新聞学院長)、井頓泉(中国宋慶齢基金会副主席)、?恵生(中華全国新聞工作者協会常務副主席)、袁岳(零点研究諮詢グループ董事長)、金瑩(中国社会科学院日本研究所研究員)、王暁輝(チャイナネット総編集長)、?飛(北京戯曲評論学会会長)の5名が参加しました。
まず、前半パートの基調講演において、中国側から趙氏が「メディア分科会は今までの10回のフォーラムにおいて必ず取り上げられていたテーマで、時には厳しい議論となった。メディアは我々の生活に直接影響を受けるものであって、『賢いリーダーはメディアについていく必要はない』などと言うものの、どの国のリーダーもメディア報道に影響を受けないということはない」と述べ、今回の分科会の意義を強調しました。
次に杉田氏は、「確かにメディア、ニュース報道はネガティブなものを伝えがちであり、その結果マイナスイメージを作りだしている部分はある。ネガティブなイメージを作り出す記者やその記者がつくるニュースは、相手国に対する知識がなかったり、あるいは相手の立場に立った考えができないような場合が多いと思う。我々の使命としては、相手方に立つことを心掛け、それについて深い知識を得ていくことが必要条件になってくると思う」と述べ、メディアにとって必要なことを改めて強調しました。
続いて王氏が「現在、メディア自体にもSNS等の新しいメディアが参入してきて、かなり複雑な事態があり、これらは伝統的なメディアに影響することもある。しかし、こういった局面で特に理性的な声を探すのは難しく、だからこそ、正しい立場をとって事実を報道しなければならない」と述べ、SNS等が世の中に大きな影響を与えている状況において、既存メディアの役割について語りました。
さらに、小倉氏が「率直に申し上げれば、日本においてメディアは政治的すぎる。そして、中国の人はメディアを非常に信頼している一方で、日本は信頼していない。それは、日本においては国民一人ひとりからするとメディアは非常に大きな権力として映るから信用ならない」と語り、日中両国民のメディアに対する意識の差を指摘しました。
また、小倉氏の指摘に関連して、インターネットは民意を反映しているのかという点について、世論調査では、日本において「反映している」と思う人は3割弱にとどまる一方で、中国世論においては、「反映している」または「適切に反映している」と思う人を併せると8割を超えるという指摘が出たところ、中国側の王氏は「中国はここ数年インターネットがすさまじい速さで発展してきた。そして、膨大なユーザーを持っているからこそ、国民の思っていることを反映していると思う。また、もう一点付け加えるとメディアは日中関係に対して責任を持たなければならない。政治面の話になると国民感情などが様々に入り混じってくるために複雑なこととなるが、基本的にはメディアも客観的な立場に立って情報を発信し、両国メディアはやはり明るい未来を期待して報道を行っていると思う」と語り、インターネットの発展と民意、そして既存のメディア報道に対する姿勢と、メディア報道の受け手の側となる民意のあるべき姿について主張しました。
一方で日本側の加藤氏は「メディアがマイナス面の報道を行うことは決して悪いと言っているわけではなく、メディアはそういった宿命なのではないかと思う。例えば、日本国民がネガティブなニュースを見てもあまり驚かないのは、ネガティブではない通常の日本について身をもって体験しているため、ネガティブなことは特殊なものとして受け止められる。そういったところで報道機関という機能は役立っていると思う。しかし、外国に対してネガティブな報道が出た時は、そのような通常の部分が欠け落ちているために、そのままネガティブなものと受け止められてしまう。そうなれば、中国に対してネガティブな報道がなされると、悪いことだらけではないかという勘違いが起こってしまう。ここがメディアの力で克服できるのか、民間交流によって克服せざるをえないのかが一番悩ましいところだと思う」と述べ、メディアの構造から宿命までを解説し、その克服をいかにして行っていくべきかについて主張しました。
加藤氏のこのような主張に対して、「一つのいいメディアは実際のものをありのままに報道をする。例えば領土問題が存在しなければメディアは領土紛争について報道することはないと言え、そうだとすれば、中国の伝統的なメディアはとても客観的な立場に立って報道を行っている。しかし、今はSNS等により個人的な情報発信者がどんどん増えており、客観的かつ正確に報道するのではなく、自分勝手に発信することがよくあるということだ。もう一点は、一つの事実について何を報道するのか、どこにエンファサイズするのかを取捨選択しなければならない問題もある。中国の場合は国益に合うように、また、中日両国の関係に良い影響を与えるように話をする必要があり、話を誇張してはならず、政府がそれをどのようにコントロールするかも非常に大切になってくる。政府が適切な処置をとっていれば、当然ポジティブな報道となる」と述べて、SNSが発達している世の中における既存メディアとの付き合い方、政府とメディアとの関係について主張しました。
一方で小倉氏は「議論の際に注意をしなければならないことは、メディアは発信手段なのか、情報伝達手段なのかという点であって、両方の側面があると思う。情報伝達としてのメディアは非常に客観的であってフェアな世界であるものの、メディアが政治的な意見を持っている場合、それを主張することはあっていいと思う」と述べ、受け手側も発信手段と情報伝達手段なのかを見極めることが必要だと語りました。
その後、議論は日本の安保法制とメディアに関する部分に及び、「安保法制に対して反対の声を日本のメディアは報じなかったということではないが、大変難しいのは、外交や安保という領域は、国益というものを常に意識しなければいけないが、国益を主張してなんでもやっていいわけではなく、常に心がけているのは、長い意味での日本の国益を考えてやっていこうと考えている」と述べ、国益に伴う報道に関しては、記者として試行錯誤していると語りました。
次に、王氏から「メディアの客観性、公平性について中国の哈爾濱で旧日本軍による毒ガスの爆発による死者が発生した事件があったものの、日本のメディアは当時中国側の被害者のことをあまり報道しなかった。もっとも、そのような報道によって、様々な反感が出てきたことも事実であった。こういった場合においては、相手への思いやりがあるかどうかが必要であって、メディアは人の立場に立って報道するべきである」と主張し、メディアの報道姿勢にたいして指摘がなされました。
メディアの在り方における様々な角度からの自由闊達な議論が白熱するままに、分科会の前半は終了し、コーヒーブレイクに入りました。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中) また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。