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日本の言論NPOと中国国際出版集団は、日中の両国民を対象とした共同世論調査を今年8月から9月にかけて実施した。この調査は、最も日中関係が深刻だった2005年から日中共同で毎年行われているものであり、今回で11回目となる。調査の目的は、日中両国民の相互理解や相互認識の状況やその変化を継続的に把握することにある。
日本側の世論調査は、全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に9月4日から9月28日まで、訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000である。回答者の最終学歴は、中学校以下が8.8%、高校卒が46.5%、短大・高専卒が17.6%、大学卒が23.0%、大学院卒が2.0%だった。
これに対して、中国側の世論調査は、北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州を含む10都市で、18歳以上の男女を対象に、8月21日から9月7日の間で実施され、有効回収標本は1570である。回答者の最終学歴は中学校以下が11.5%、高校・職業高校・専門学校卒が40.7%、大専卒が25.7%、大学卒が20.8%、大学院卒が1.2%だった。
なお、この調査と別に、言論NPOと中国国際出版集団は、有識者へのアンケート調査を世論調査と同じ内容で実施した。日本では、これまで言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の企業経営者、学者、メディア関係者、公務員など約2000人に質問状を送付し、うち627人から回答をいただいた。回答者の最終学歴は、大学卒が67.5%、大学院卒が24.4%で合わせて91.9%となる。また、有識者は一般の日本人の傾向とは異なり、79.9%が中国への訪問経験があり、76.4%が、会話ができる中国人の知人を持っている。
中国では、零点研究コンサルティンググループが、これまでのプログラムや、顧客との繋がりを通して、企業関係者、政府関係者、メディア関係者、専門家、公益団体関係者からなる専門家リストを有しているため、そこからサンプルリストを作った。8月20日から9月24日までの間に調査を行い、400人から回答を得て、その回答内容を中国有識者として分析した。
日本人の中国に対する印象は「良くない」(「どちらかといえば良くない印象」を含む、以後同様)は依然として高水準だが、最も悪かった昨年(93.0%)よりはやや改善し、88.8%となった。
中国人の日本に対する印象は、「良くない印象」が昨年の86.8%から78.3%へと改善し、8割を切った。特に、最も悪かった2013年(92.8%)から見ると14ポイントも改善している。さらに、「良い印象」(「どちらかといえば良い印象」を含む)を持っている中国人は、昨年の11.3%から今年は21.4%と約10ポイント増加している。
日本人が中国に「良い印象」を持つ理由では、「中国古来の文化や歴史に関心があるから」が35.8%(昨年38.2%)で最多となった。これに「留学生の交流など民間交流により中国人の存在が身近になっているから」が34.0%(昨年39.7%)で続き、民間交流の展開が中国に対するプラスの印象に寄与している。
中国人が日本に対して「良い印象」を持つ理由としては、「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高いから」(57.0%、昨年は52.6%)、「日本人は真面目で、勤勉で、努力家だから」(47.2%、昨年は53.8%)が上位を占め、日本人の国民性に対する高い評価がプラスの印象に寄与している。増加が目立ったのは、「日本は経済発展を遂げたから」で、昨年の19.7%から今年は36.8%へと17ポイント増えている。
日本人が中国に「良くない印象」を持つ最も多い理由は、「歴史問題などで日本を批判するから」が55.1%(昨年52.2%)で、これに「資源やエネルギー、開発などの行動が自己中心的に見えるから」が53.0%(昨年52.8%)で続き、ここまでが5割を超えた。昨年55.1%で最も多かった「国際的なルールと異なる行動をするから」は47.9%で、今年は3番目の理由となった。「尖閣諸島を巡り対立が続いているから」は、46.4%(昨年50.4%)と3年連続で減少している。増加が顕著だったのは、「軍事力の増強や、不透明さが目に付くから」で、昨年の31.2%から今年は39.2%に増え、4割に迫っている。
一方、中国人が日本に「良くない印象」を持つ理由では、「侵略の歴史をきちんと謝罪し反省していないから」が昨年の59.6%から10ポイント以上増加して、70.5%で最多となった。「日本が魚釣島を国有化し対立を引き起こしたから」が68.1%(昨年64.0%)で続き、この2つが突出している構図は昨年と同様である。
日中両国民が互いに相手国に対して難しい国民感情を抱いている現在の状況について、日本人では「望ましくない状況であり、心配している」と回答した人が31.0%(昨年32.5%)、「この状況は問題であり、改善する必要がある」と回答した人が43.9%(昨年46.9%)となり、合わせると7割以上の日本人が現状を問題視していることになる。
他方、中国人では、「望ましくない状況であり、心配している」と回答した人が20.7%(昨年35.2%)、「この状況は問題であり、改善する必要がある」と回答した人が34.9%(昨年35.2%)となり、合わせると5割以上の中国人が現状を問題視していることになる。ただ、「当然であり、理解できる状況である」と回答した人も31.5%と3割程度存在している。
日本人が中国について「思い浮かべるもの」では、昨年と同様に「大気汚染」の36.8%(昨年41.2%)が最も多く、これに「中華料理」(33.7%、昨年は34.0%)が続く構図である。「尖閣諸島問題」を挙げる人は、昨年の28.6%から減少して19.9%と2割を切り、国民意識の中で「尖閣」が落ち着き始めている。
中国人が日本について「思い浮かべるもの」は、「釣魚島」が50.6%(昨年46.6%)で、昨年と同様に最も多かった。「南京大虐殺」は、昨年と同様に2番目だが、35.5%から47.9%へと大幅に増加し、再び歴史認識がクローズアップされている。ただ、「桜」(35.0%、昨年は28.2%)など、政治的な問題に関係しないものの中にも増加傾向は見られる。
日本人が「知っている中国人の政治家」では、依然として「毛沢東」が90.1%(昨年92.0%)と最多となるなど、過去の指導者の知名度は高い。「習近平」は昨年の58.8%から11ポイント増加して69.8%となった。
中国人が「知っている日本の政治家」では、「安倍晋三」首相が、昨年の75.2%から増えて、83.6%と8割を超えている。
日本人の66.6%(昨年69.0%)と7割近くが、中国を「社会主義・共産主義」の国と認識している。この傾向は過去11年を通して見ても大きな変化はなく、最も多い中国認識として一貫して7割前後で推移している。
一方、中国人では、日本を「軍国主義」とみる見方が、昨年の36.5%から約10ポイント増加して46.0%で最多となり、昨年39.7%で最も多かった「資本主義」の42.9%を上回った。戦後日本が世界に標榜してきた「平和主義」は9.2%(昨年10.5%)、「民主主義」は13.1%(昨年14.4%)、国際協調主義も9.2%(昨年6.7%)とそれぞれ1割程度に過ぎなかった。
今後の日中関係の見通しについては、両国で「悪くなっていく」という見通しが減少したが、中国人は日本人ほど日中関係の改善についてまだ確信を持つことができていない。
現在の日中関係を「悪い」(「どちらかといえば悪い」を含む、以後同様)と判断している日本人は71.9%だが、昨年の83.4%からは10ポイント以上大幅に改善している。
中国人では、「悪い」という判断が67.2%で、最も悪かった2013年(90.3%)からは改善しているが、昨年からは改善が止まっている。
今後の日中関係の見通しについては、日本人では、「変わらない」という見方が42.5%(昨年34.7%)で昨年同様最も多いが、今後も「悪くなっていく」(「どちらかといえば悪くなっていく」を含む、以後同様)と考えている人は、昨年の36.8%から24.7%へと大幅に減少した。さらに、「良くなっていく」との見方も、昨年の8.0%から12.7%に増加しているなど、楽観的な見方が出始めている。
中国人でも、「悪くなっていく」が昨年の49.8%から41.1%へと減少している。ただ、「良くなっていく」との見方は増えておらず、中国人は日本人ほど日中関係の改善についてまだ確信を持つことができていない。
日本人が考える日中関係の最大の懸念材料は、昨年と同様に「領土をめぐる対立(尖閣諸島問題)」の56.0%(昨年58.6%)である。これに「日中両国政府の間に政治的信頼関係がないこと」が38.2%(昨年35.0%)で続き、「国民間に信頼関係がないこと」の25.9%(昨年25.5%)と合わせると、6割を超える人が、政府や国民間に信頼関係がないことを、関係改善の障害と捉えている。昨年調査では2番目に多かった「中国の歴史認識や歴史教育」は、42.9%から今年は26.3%へと大幅に減少している。
中国人でも、「領土をめぐる対立」を懸念材料と考える人が、66.4%(昨年64.8%)で昨年同様最も多かった。ただ、日本と同様に、中国でも政府や国民レベルの信頼関係がないことを関係改善の障害と見ている人は増加しており、「政府間の信頼関係がないこと」(25.5%、昨年は25.4%)、「国民間に信頼関係がないこと」(20.8%、昨年は15.5%)の2つを合わせると4割を超えている。
日中関係を「重要である」(「どちらかといえば重要」を含む、以下同様)と考える人は、日本では昨年の70.6%から74.4%へ、中国では昨年の65.0%から70.1%へとそれぞれ増加している。
その「重要である」理由については、日本人では「重要な隣国同士だから」との見方が、58.5%(昨年53.4%)で最多となったが、「アジアの平和と発展には日中の共同の協力が必要だから」も55.2%(昨年55.8%)と半数を超えているなど、重要性を実質的に見ている。
これに対し、中国人では、「重要な隣国同士だから」が、昨年の45.5%から20ポイント以上増加して66.8%で突出しているなど、重要性に対する認識が一般的な理解にとどまっている。
日本人が、今後、日中関係を向上させるために有効だと考えていることで、最も多かったのは、「政治・安全保障関係の強化」の32.6%で、これに「グローバルイシューにおける協力関係の促進」(19.1%)が続いている。
これに対して、中国人では、「経済関係の強化」という回答が、31.8%で最も多い。これに「民間対話と文化的交流の促進」(22.4%)が続いている。
日中双方の相手国に対する親近感と、米国に対するそれぞれの親近感の比較については、日本人では「米国により親近感」を覚える人が半数を超え、中国人では「どちらにも親近感を感じない」という人が半数近い。「相手国に親近感を覚える」という人は日中双方でそれぞれ1割に満たない。
日中関係と日米関係の重要性を比較すると、日本人は55.1%(昨年50.1%)が、「どちらも同程度に重要」と考えている。「日米関係の方が重要」は、34.4%(昨年36.4%)と3割程度ある一方で、「日中関係の方が重要」は、わずかに3.1%(昨年3.7%)にすぎない。
中国人では、「どちらも同程度に重要」と考える人が、49.9%と最も多く、昨年の40.3%から10ポイント近く増加している。これに続くのは、「中米関係の方が重要」の22.8%(昨年22.5%)である。昨年は22.0%だった「日中関係の方が重要」は、今年は8ポイント減って14.5%となった。
日中双方の相手国に対する親近感と、米国に対するそれぞれの親近感を比較すると、日本人では「米国により親近感」を覚える人が53.5%(昨年55.7%)と半数を超え、中国人では「どちらにも親近感を覚えない」という人が49.6%(昨年44.4%)と半数近い。「相手国に親近感を覚える」という人は、日本人では4.4%(昨年5.6%)、中国人では6.1%(昨年4.4%)というように日中双方でそれぞれ1割に満たない。
日中双方の相手国に対する親近感と、韓国に対するそれぞれの親近感の比較では、日本人では「韓国に親近感を覚える」という人が10ポイント減っているが、逆に中国人では10ポイント増加している。
日中関係と日韓関係の重要性の比較では、日本人の54.3%(昨年47.0%)が「どちらも同程度に重要」と回答している。「日中関係がより重要」は23.5%と昨年の15.6%から増加したが、「日韓関係がより重要」は6.3%と昨年の12.4%から減少している。
中国人でも、「どちらも同程度に重要」との見方が43.2%(昨年43.5%)で最も多いが、「中韓関係がより重要」がそれに続き、35.5%(昨年33.3%)となり、「中日関係がより重要」の9.0%(昨年6.5%)を大きく上回っている。
日中双方の相手国に対する親近感と、韓国に対するそれぞれの親近感の比較では、日本人で、「韓国により親近感を感じる」という人は、昨年の37.2%から26.3%へ大幅に減少したが、「中国により親近感を感じる」は8.8%(昨年5.0%)にすぎない。最も多いのは「どちらにも親近感を感じない」で昨年の31.8%から39.5%へ増加している。
他方、中国人では、「韓国により親近感を感じる」という人が62.1%と昨年の52.7%から10ポイント近く増加した。「日本により親近感を感じる」はわずか4.4%(昨年3.5%)である。
※日本側の2014年の調査結果は「第2回日韓共同世論調査」のものである。
次の日中首脳会談で議論すべきものとして、日本人で最も多いのは「両国の関係改善に向けた広範な話し合い」で43.6%(昨年45.8%)である。
他方、中国人で最も多いのは「尖閣諸島に関する領土問題」の49.7%(昨年49.2%)で、続いて「歴史認識問題」(38.3%、昨年は38.1%)である。
安倍首相が今年の8月14日に出した「安倍談話」について、日本人で「評価している」(「ある程度」を含む)という人は32.1%で「評価していない」(「あまり」を含む)の22.2%を上回っている。ただ、「どちらともいえない」という人も23.2%いるなど評価は分かれている。
中国人では「評価していない」(「あまり」と「全く」の合計)が74.1%と7割を超え、「評価している」(「大変」と「ある程度」の合計)は9.5%と1割に満たない。
日本人で中国に「行きたい」という人は32.9%と昨年の29.6%からやや増加している。「行きたくない」は67.0%となり、昨年の70.4%からは減少している。
一方、中国人で日本に「行きたい」という人は35.7%となり、昨年の22.5%から大幅に増加している。「行きたくない」は63.2%で、昨年の72.6%より減少している。
日本人が中国に「行きたい」と考えている理由は、「歴史・文化遺産への訪問」(69.0%)、「自然や観光地への訪問」(66.9%)など旅行に関する2つが突出している。
中国人が日本に「行きたい」と考える理由では、「自然や観光地への訪問」が88.0%が突出している。ただ、中国人では、「買い物」を目的とする人が36.3%おり、日本人の「買い物」を目的とする人の16.4%を大幅に上回っている。
日中の民間交流の現状について、日本人は「活発ではない」(「あまり活発でない」との合計、以下同様)との見方が36.5%、「活発である」(「ある程度活発である」との合計、以下同様)との見方が34.1%というように、評価が拮抗している。さらに、「わからない」も29.1%ある。同様に中国人でも、「活発でない」が47.9%、「活発である」が44.0%と見方が分かれている。
しかし、民間交流が日中関係の改善や発展にとって、「重要である」(「どちらかといえば重要である」を含む、以後同様)と考えている人は、日本人では67.1%(昨年64.4%)いる。中国人でも、「重要である」と考える人は昨年の63.4%から13ポイント増加して76.9%と8割に迫っている。
その「重要である」理由としては、日本人では、「国民間の相互理解」(71.7%、昨年は70.7%)や「相手国への理解が深まる」(66.2%、昨年は66.8%)ことを挙げる人が多い。
中国人でも、「相手国への理解が深まる」が、昨年の32.3%から51.9%へと20ポイント近く増加して最多となっている。昨年は56.7%で突出していた「両国の共通の利益を拡大するための基盤となるから」は、今年は43.3%に減少している。
日中関係と歴史問題について、日本人では、「日中関係の状況に関わらず、歴史問題を解決することは困難」が35.3%で最も多いが、昨年の42.7%からは減少した。これに対して「日中関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」が29.4%となり、昨年の22.2%から増加して3割近くになっているなど、楽観的な認識が出始めている。
一方、中国人では、「歴史問題が解決しなければ、中日関係は発展しない」と考える人が、昨年の31.4%から大きく増加して47.0%と半数近くになっている。それに伴い、昨年34.1%で最も多かった「中国と日本の関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観的な見方は、7ポイント減少して27.6%になるなど、日本とは逆に歴史問題の解決を重視する見方が増えている。
日中間で解決すべき歴史問題に関しては、日本人の56.1%(昨年56.0%)が、「中国の反日教育や教科書の内容」と考えている。ただ、「侵略戦争に対する日本の認識」が、昨年の25.7%から32.2%に増加するなど、日本自身の姿勢を問題として挙げる人も増えている。
中国人では、「日本が侵略戦争に関する歴史の定説を尊重」が、昨年の42.0%から56.2%へと大幅に増加し、さらに、「日本が真摯に侵略戦争の歴史に対して反省と謝罪」(54.3%、昨年は54.8%)も5割を超えるなど、日本側の侵略戦争に対する認識を問うものが上位を占めている。
首相の靖国神社参拝について、「首相としての立場で参拝しても構わない」と「私人としての立場なら構わない」の2つを合わせると、日本人の7割近くが参拝容認派となる。ただ、「首相としての立場で参拝しても構わない」は昨年の40.7%から33.5%に減少している。
一方、中国人では「公私ともに参拝すべきでない」が60.2%(昨年59.5%)となっている。
日本人では、日中両国の領土をめぐる対立の解決方法について、「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」が46.2%(昨年48.4%)で昨年同様最も多い。
これに対して中国人では、「領土を守るため、中国側の実質的なコントロールを強化すべき」との回答が58.2%で最も多いが、昨年の63.7%からは減少している。「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」が、昨年の32.6%から43.6%へと10ポイント以上増加している。
尖閣諸島をめぐる領土の対立を契機として、日中間で軍事紛争が勃発する可能性について、日本人では、昨年同様「起こらないと思う」との見方が、38.8%(昨年38.0%)で最も多い。しかし、「わからない」も34.2%(昨年32.9%)ある。「将来的には起こる」と、「数年以内に起こる」という見方は合わせると26.9%(昨年29.0%)だった。
中国人では、「将来的には起こる」と「数年以内に起こる」の合計は41.3%と4割を超えているが、昨年の53.4%からは12ポイント減少している。逆に、「起こらないと思う」との見方は、昨年の27.4%から39.2%へと12ポイント増加している。
日本人の68.3%が、日本にとって軍事的な脅威だと感じる国・地域が「ある」と考えている。中国人でも60.3%が、中国にとって軍事的な脅威だと感じる国・地域が「ある」と答えている。
次に、「ある」と答えた人に対して、スペシャルクエスチョンとして、その具体的な国・地域を尋ねた。日本人では、「北朝鮮」が75.0%で最も多く、これに「中国」が68.1%で続き、この2つが突出している。
他方、中国人では、「日本」が81.8%で最も多く、昨年最多だった「米国」(73.8%)を抜いている。昨年調査では、全員に対して質問する形式だったため、単純な比較はできないものの、「日本」は昨年の55.2%から、「米国」は昨年の57.8%からそれぞれ大幅に増加している。
「中国」に対して「軍事的な脅威を感じる」日本人にその理由を尋ねると、「しばしば日本の領海を侵犯しているから」が72.5%で最も多く、これに「日中間には、尖閣諸島や海洋資源で紛争があるから」が61.7%が続いている。増加が目立ったものとしては、「中国の軍事力はすでに強大だから」が昨年の31.9%から41.3%へと10ポイント増加している。
「日本」に「軍事的な脅威を感じる」中国人にその理由を尋ねると、「日本は米国と連携し軍事的に中国を包囲しているから」が、64.1%で最多となった。「安保法制の成立」をあげる人は、13.2%と1割程度だった。
日本と中国の経済関係について、日本人では「両国経済は競合しており、win-winの関係を築くことは難しい」(「どちらかといえば」を含む、以後同様)との見方が今年も最も多いが、昨年の47.1%から38.0%に減少している。その一方で、「両国経済は相互に補完しており、win-winの関係を築くことができる」(「どちらかといえば」を含む、以後同様)が昨年の20.1%から27.7%に増加した。
逆に、中国人では、「両国経済は相互に補完しており、win-winの関係を築くことができる」が51.1%と最も多いが、昨年の62.9%からは減少した。その一方で、「両国経済は競合しており、win-winの関係を築くことは難しい」が昨年の28.7%から43.3%へと増加した。
日中の経済・貿易関係の今後の見通しについては、日本人では「今後は減少する」(「大きく」と「やや」の合計、以後同様)との見方が41.9%、「今後も変わらない」との見方が18.1%となり、合計すると日本人の60.0%が、冷え込んだ今の状況から脱却できないとみている。
中国人では、「今後は減少する」との見方が43.5%、「今後も変わらない」との見方が27.8%となり、合計すると中国人の71.3%が日中の経済・貿易関係の今後に明るい見通しを持っていない。
日中の経済・貿易関係を発展させるために必要なことでは、日本人の62.9%、中国人の50.3%が「政府間関係の改善」と回答しており、これが最優先課題であるという点で両国民の認識は一致している。中国人では、「民間企業による地道な経済活動の強化」が必要だと考える人も31.9%と3割程度存在している。
日本のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加の是非について、日本人では、「どちらともいえない」が39.3%で最も多い。「参加しなくてよかった」との見方は31.9%で「参加すべきだった」の3.9%を大きく上回っている。
中国人では、「参加しなくてよかった」との見方が33.9%で最も多いが、「参加すべきだった」との見方も23.8%ある。なお、「AIIBを知らない」という人も31.5%いる。
日本の将来にとって必要な経済協力の枠組みについて、日本人ではどの枠組みが必要なのか「わからない」という人が50.3%と半数を超えている。
中国人が、中国の将来にとって必要だと考える経済協力の枠組みについては、「RCEP」(35.5%)「TPP」(33.9%)、「日中韓FTA」(34.0%)というように、それぞれ3割程度ある。
日本人の58.0%(昨年54.6%)、中国人の46.7%(昨年50.3%)と半数近くが、日中関係の平和的な共存・共栄関係を期待しながらもその実現に確信を持つに至っていない。「平和的な共存・共栄関係が実現できる」との見方は、中国人では19.4%(昨年16.5%)、日本人では8.2%(昨年7.8%)にすぎない。さらに、今後も「対立関係が継続する」との見方も日本人では19.6%(昨年17.3%)、中国人でも24.8%(昨年20.7%)とそれぞれ2割程度存在している。
日中間やアジア地域に存在する課題の解決に向けて、日中両国が協力を進めることについて、日本人の64.4%(昨年66.1%)、中国人の54.3%(昨年52.2%)が「賛成」(「どちらかといえば賛成」を含む)と答えている。しかし、中国には「反対」(「どちらかといえば反対」を含む)する人も29.3%(昨年33.5%)と3割程度存在している。
協力するべき具体的な分野としては、日本人は「大気汚染などの環境問題」が67.7%(昨年85.6%)で最も多く、以下、「北朝鮮の核問題」(50.9%、昨年は67.3%)、「食の安全・安心」(46.4%、昨年は80.2%)、「北東アジアにおける平和維持」(39.8%、昨年は59.6%)までが約4割に達しているなど、具体的な課題での協力に関心が集まっている。増加が目立った選択肢としては、「観光」が昨年の18.5%から今年は29.3%に伸びている。
これに対して中国人で、最も多いのは「北東アジアにおける平和維持」だが、37.3%(昨年37.8%)と4割を超えていない。以下、「貿易・投資などにおける協力関係の強化、自由貿易地域の形成」(35.1%、昨年は29.1%)と、「省エネ技術、風力発電・太陽光などの再生可能エネルギー」(30.7%、昨年は28.6%)までが3割を超えている。昨年からの増加が顕著だったのは、日本と同様に「観光」で8.3%から17.0%へと倍増している。
今後10年間のアジアにおける日本の政治的影響力について、日本人では、「変わらない」との見方が45.1%で最も多い。「大きくなる」(「やや大きくなる」との合計、以後同様)は23.2%で、「小さくなる」(「やや小さくなる」との合計、以後同様)は15.0%だった。中国人では、「大きくなる」が38.9%で、「変わらない」の35.5%と並んでいる。
続いて、日本の経済的影響力では、日本人は「変わらない」が34.9%で最も多いが、「大きくなる」も30.7%と3割を超えている。中国人では、「大きくなる」が39.8%と4割近くなり、「変わらない」の33.4%を上回っている。
日本の軍事的影響力では、日本人は「変わらない」(46.4%)が最も多い。「大きくなる」が23.0%で続き、「小さくなる」は11.3%と1割程度だった。中国人では、「大きくなる」が46.0%と4つの影響力の中でも特に多い。「変わらない」は33.6%で、「小さくなる」は17.2%と2割を切っている。
最後に、日本の文化的影響力では、日本人は「変わらない」が46.2%で最も多く、「大きくなる」が34.8%で続いている。「小さくなる」はわずかに4.2%だった。中国人はここでは「変わらない」が43.1%で最も多く、「大きくなる」が31.8%で続いている。
一方、今後10年間のアジアにおける中国の政治的影響力については、日本人は「大きくなる」との見方が52.0%と半数を超えている。中国人では、「大きくなる」との見方がさらに多く、88.7%と9割近くになっている。
続いて、中国の経済的影響力でも、日本人の48.1%が「大きくなる」とみている。中国人では「大きくなる」が84.7%と8割を超えている。
中国の軍事的影響力に関しては、日本人では「大きくなる」が64.2%と、4つの影響力の中でも特に多い。中国人では「大きくなる」が84.1%とここでも8割を超えている。
最後に、中国の文化的影響力に関しては、日本人はここでは「変わらない」が52.1%と半数を超え、「大きくなる」は17.8%と2割に満たなかった。中国人では「大きくなる」が74.3%とここでも高い数値ではあるものの、他の影響力と比較すると10ポイント前後低くなっている。
東アジアの将来のために目指すべき価値観として、日中両国民が最も重要だと考えているのは「平和」で、日本人では72.0%、中国人では59.6%とそれぞれ高い水準にある。続いて、日本人の41.6%、中国人の39.6%が「協力発展」が重要だと考えており、日中両国民の認識は一致している。
中国のメディアの日中関係の改善や、両国民の相互理解を促進していく上で貢献しているかについて、中国人の73.2%と7割以上が「貢献している」(「とても」と「少し」)の合計、以下同様)と答えており、中国人の自国メディアに対する評価は高い。
これに対して、日本のメディアが貢献しているかについて、日本人の「貢献している」という評価は33.1%にすぎない。「逆に悪影響を与えている」という評価も14.4%ある。
次に、中国のメディアの日中関係に関する報道を「客観的で公平」と感じている中国人は75.9%(昨年73.9%)と昨年同様高水準にある。
これに対して日本人の場合、日本の報道を「客観的で公平」かどうか「わからない」という人が50.3%(42.4%)で最も多い。「客観的で公平」だと感じている人は、昨年の26.8%から減少して19.5%と2割を切っている。「客観的で公平ではない」は30.1%(昨年30.5%)だった。
日本人の38.9%と約4割は、インターネット上の世論は民意を「適切に反映していない」と見ているが、「適切に反映している」(「ある程度」を含む、以後同様)との見方も29.5%と3割程度ある。これに対し、中国人では、「適切に反映している」が84.4%と8割を超えている。
日本人で、「中国への訪問経験」があるという人は15.1%(昨年14.3%)で、「親しい」、「多少話をしたりする」中国人の友人がいるという人は19.2%(昨年21.1%)となり、昨年から大きな変化はない。中国についての情報源は「日本のニュースメディア」(95.8%、昨年は96.5%)が大勢を占め、その中でも「テレビ」(75.8%、昨年は76.1%)が突出しているという構図も昨年と同様である。
一方、中国人では「日本への訪問経験がある」という人は、昨年の6.4%から7.9%に増加している。さらに、「親しい」、「多少話をしたりする」日本人の友人がいるという人も昨年の3.1%から7.3%へと急増している。
日本についての情報源は多様化している。「中国のニュースメディア」(89.6%、昨年は91.4%)が特に多いが、その他にも「中国のテレビドラマ・情報番組、映画作品」(57.6%、昨年は61.4%)、「中国の書籍(教科書も含む)」(30.1%、昨年は37.4%)も比較的多く利用し、さらに「日本のニュースメディア」も15.7%(昨年14.3%)ある。インターネットやSNSの活用も日本人よりも多い。
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