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この分科会では日中関係の交流を大いに前進させるために有意義な議論をしたいと考えております。
この分科会に参加できて大変光栄に思います。
ご紹介頂きました中川です。ポスト小泉政権の前のこのフォーラムに対する高い関心は日本国民の日中関係に対する関心の表れでもあると思います。ですから、このフォーラムが今後の日中関係においてよい影響を与えることを期待しています。
「今日、アジアを地理的に捉えることに本質的な意味はなくなっている。アジアはヨーロッパと接触してから近代化した。アジア的なものから脱却した国 こそ「アジア」だということになっている。今日、ヨーロッパ文明の最先端を行くアメリカに対する「崇米(すうべい)」の複雑な心理がアジアにあり、崇米意 識で他のアジアの国を見下す傾向がある。今、アジアに求められているのはこうした垂直的な思考を克服し、水平的な思考に転化することである。21世紀にお いては、ややもすると反米的な傾向の人々が、アジアが結束して欧米と対抗すべしとの考え方を強めがちだが、それは全くアジアのためにならない。アメリカは これまでも、また今後も圧倒的な存在であり、それはアジアの繁栄と矛盾しない。アジアには、第一に、経済発展段階の不均衡がある。しかし、欧州と同様、同 じような経済水準をアジア内で達成すべきだという発想は、それ自体が垂直的発想であり、近代化の優劣の考え方は疑問である。多種多様な文化が共存するのが アジアであり、我々は異文化の存在を正視すべきであって、多様性の魅力に対してこそ、世界は投資する。不均衡の特徴をこそ活かすべきであり、それは優劣で はなく、差異と捉えるべきだ。第二に、領域に関する不均衡であり、中国のような広大な国もあれば、シンガポールのような国もある。そのような中では、アジ アにおける地域単位での交流をこそ加速させるべきだ。
重要なのは、新しいアジアと政府の役割だ。民間でのビジネス連携の中で、新しいアジアが自然に生まれつつある。欧米との交流を国内改革につなげるの が20世紀後半だったが、今日では、アジアでの交流が国内改革につながる。「新しいアジア主義」を先導するのは政府ではなく、民間である。ナショナリズム 的な政府による活動制約をはずし、自由な活動のインフラ整備に政府の役割を求めるべきだ。我々は、都市化、自由化、民主化をアジアにもたらした欧州革命の 次の革命を前にしている。工業化がもたらした普遍的な価値の上に、新たなアジア的な価値を創出、発信できると考える。」
日中関係は非常に複雑だと感じています。例えば、1992年天皇皇后両陛下の上海訪問では5~10万の市民が天皇陛下を迎え、今では中国人は日本の製品を沢山持っているにも拘らず、近年起きた反日デモでは5万人の人が参加しました。ではなぜ中国は日本に脅威を感じるのかを考えると、戦争という歴史的背景や周辺有事に対して中国人の不安感や日本のイラク派兵などの問題があると思います。
次に、日本も逆に中国の軍事費の増加にたいして脅威を感じています。また、軍事費の中でも公開していない部分があるのではないかという懸念もあります。これをうけて中国は日本に対して軍事費がどのようになっているのかをきちんと公表しなくてはならないと思いますし、現に透明化に向けて毎年白書を出すように努力しています。しかし、何処の国にもすべてを公開できるわけではありません。
このように、様々な誤解をどのようにして解決できるのか、政治経済だけの交流だけではなく、文化の面からも両国は互いの国の利益の上に日中関係を考え、日中関係の認識のギャップを埋めるよう努力しなくてはならない。
日中共同世論調査の中で、日本の国連常任理事国入りについて反対と賛成プラス条件付賛成の割合が拮抗していることは注目すべきことです。国連がさらにその目的を体現するためには重要だと考えます。日本と中国の間には大国同士の強強関係に対する準備ができていなかったのではないかと思いますが、それは歴史的問題であり、心理的問題でありますし、今後ポスト小泉政権で解決しなければならない問題だと思います。今後は大国同士の関係を築かなければならないと思います。日中間系には政府間交流以外の公共外交(政府以外)のルートが弱くなっていることが今日の問題を引き起こしているのではないかと考えます。ですから対外のメッセージを正確に伝え合うことが重要だと思います。その上で、公共外交の役割は非常に重要ではないかと思います。非政府の学者、公共領域の方による活発な交流をより拡大するが必要があると思います。
それでは中国側から中川先生への質問などがあればお願いいたします。
中川先生はアジアとの関係は重要だとおっしゃいましたが、日本のアジア外交において今後は中国と韓国との関係を一層改善する必要があると思いますがいかがでしょうか。
中川先生の新アジア主義とはどういうものなのか、そしてこれは二国間でどういう役割を果たしうるのかお聞かせください。
新アジア主義とは定義や概念はしっかりと固まったものではありません。民間企業のビジネスの連携の中で、双方が利益を拡大し、お互いの困難を解決していく上で明らかになるものが新アジア主義だと思います。それはアジアが欧米からも学びつつ、多種多様な異質性の中でアジアにしかないものをつくり発展していくことだと思います。新たな精神革命的なものを 含めた価値観や理念をこれから皆で作っていくこと、2極化ではなく、そして垂直的志向でもなく、水平的志向が必要です。また、日本もアジアにおいて中国と 韓国の関係を改善する必要があります。
中川さんへの質問ですが、日本はFTAなどをつくり今後民主導での交流を活発化することについて中川先生はどのようにお考えですか。
二国間関係だけではなく、全体としてのインフラを中心とした投資協定を築きながら多国間連携を進める必要があると考えます。アジアとしての国境概念を築く必要がある。
日中の交流において航空輸送路は重要だと考えます。主要都市間を最短時間で結ぶことは政治的、経済的意味があります。羽田とキンポは大成功。ホンチャオとキンポ、日中双方におけるこうした交通インフラの整備が非常に重要である。
こうしたインフラの整備は大変重要であると考えます。日本、中国、韓国の交通インフラの整備は重要です。
それではパネリストによる発言をお願いします。
我々が今東アジアと呼んでいる地域は、特定の地域を指しているものではない。その概念は未だ曖昧である。今後は日本と中国が東アジアという地域の秩 序を作っていくうえでどういう利益を生み出すことができるのかということが大事である。物理的なインフラの整備をするだけでなく、共通のルール作りなどを 行う必要がある。例えば、鳥インフルエンザといった問題や、非伝統的安全保障面における協力がありうるのではないか。今の世界が2極対立だとすれば、その中でどういうものを作るのかといったときに、民間や大学を中心として広げる必要がある。
世界中の様々な良い点を勉強し成長していかなければならないと考える。例えば日本と中国の関係を考えるときには物事を戦略的に、そしてマクロな視点から考える必要がある。中国において鉄道のインフラは非常に重要である。中国の経済の発展では鉄道の発展が必要とされており、これは日中間の交流の一つの領域であるといえる。交流発展をする中で大局に目を向け、個人的な感情をなくして協力すべきである。
中国は29カ国と国境を接している。東アジアといったときに何処を指すのか?去年から東アジアサミットで会議が開かれているが、ここでもインフラの 準備が重要だと考える。要するにアジアについて地理的意味はないといえる。アジアとヨーロッパの境目は何処にあるのか、これは地理的な要因ではなく概念的 に違う、しかしこうした概念も近年曖昧になってきている。
「政経分離」では民が先に動いて、官が後から追いかける形になっている。これは半面で柔軟性を生む。アジアにおける協力には柔軟性をもって協力して いく必要がある。お互いの成功も失敗も共有しながら発展をしていく必要がある。そしてボーダレス社会の中でどういう共通のルールを作っていくのかがこの地 域の発展に寄与するといえる。そのためにも、中国も日本も情報公開をする必要がある。
アンケート調査について。どうやって日本と中国の相互理解を良い方向に持っていけるのかということが重要である。その中でも直接的な交流が重要である。直接的交流は、相互理解において最も大きな効果を出すものである。
交流の人数やフィールドなどの表面的な交流ではなく、ホームステイなどを通した日本と中国の実際の姿を伝える心と心の交流が必要である。
交流は非常に重要。しかし、交流をしやすくするためにビザを取りやすくして欲しい。ビザの手続きが日中間の交流を阻んでいるのではないか。一般の中国人が日本に来やすいようにして欲しい。
21世紀の交流では、高校生を通した訪日を果たし、いい意味で新しい日本を発見して帰っていった。今、中国から留学生を沢山受け入れるようにしてい る。そして心と心の触れ合える場を設けることで様々な誤解を解いていく。こうした地道な活動を通して解決していく必要がある。心が柔らかな時期に交流をす ることが重要である。
大学院だけでなく、大学の学部レベルを中心に日中を含めて、東アジア全体で交流をし、学生同士が一緒に生活し勉強する環境を整え、より長い視点で交流を考える必要がる。
日中間におけるWIN-WINの関係を構築する必要がある。歴史問題を解決し、強強の大国間の関係を築いてお互いに協力の道を進まなければならない。
ただ、政経分離については、「政冷経熱」の上での政治と経済の分離を行うことには注意が必要である。
アメリカとの関係についての問題は、日米関係、中米関係がよければよいという考えがあるが、そうした米国を中心とした2国間関係だけでなく、日米中の協力関係が重要である。こうした交流関係を改善するためには弱い部分の改善とポテンシャルの部分に目を向ける必要がある。それは例えばメディアであり、環境や国際組織犯罪などの非伝統的な安全の面であり、原子力発電所などの協力や映画、アニメーション文化などを通じた交流である。交流協力は進んでいると考えるべきだが、歴史、領土、台湾問題など、意見の不一致における誤解をなくす必要がある。89年から01年まで中米関係は摩擦が続いてきたが、様々な意見の不一致の中でも安定的な発展を遂げてきている。日中関係においても時間を大切に使って解決していかなければならない。
交流が深まるということは経済において相互依存が高まることを意味している。しかし、相互依存が高まるにつれて相手のことが気になり、それが摩擦の原因になることがある。アジアにおける協力でも、どのように公平な協力関係ができるのかを考える必要がある。
金融政策の調整などでも、アジアでどうするのかを考える必要がある。97年の通貨危機は、一国の経済の不安定は他国にも影響することを教訓として残した。 こうした意味でも事前の意見交換などが重要である。こうした経験を通して問題を自然発生的に解決してきたが、これからは常設的なものにしていく必要がある のではないか。
経済格差のある国との協力関係をどのようにすべきなのか、そうしたルール作りと相互に協調する精神が必要である。
貿易を見ても日中間では非常に大きな規模になっている。だが、経済規模の発展が必ずしも問題を解決することを意味しないので、交流などの分野で協力を進める必要がある。
政経分離では、政治は政治で、経済は経済できちんと問題を解決するという意味である。中国の場合は政治と経済の関係が深い部分があるので、ビジネスの共通の基準というのを考えた際に、共通のルールを作るうえで、政経分離はやはり重要である。
お互いに率直に意見が言える関係を更に築いていく必要がある。
交流はやはり非常に大事で、ここに疑問の余地はない。72.3%の一般の日本人は日中交流が重要だと考えている。孫文や魯迅などの中国の指導者が日本に留学し勉強した経緯もあり、互いにメリットを生み出して いるといえる。では、次に具体的な部分でどのようにして交流をしていくのかを考えた際に、例えばビザの問題などを含めて交流の環境を整えていく必要があ る。
2006年08月05日 17:03
これまで(前半)の議論を集約してもらって、いくつかの問題を整理し、それにしたがって議論を堀下げていく。
前半の内容はとても豊かでした。まとめというよりは見解を述べたい。 交流は重要。 議論で出た論点は、交流の基礎、信頼関係、相互理解、相互尊重などであった。相互尊重が進められて信頼、理解もできる。
交流の内容は、経済、文化、環境、政治、安全保障問題など。
政治問題については、より深く考えてなければならない。民主というのは非常に重要である。 民主をどうやって建設していくのか。
「民主」といえば、西側の歴史や背景というのがどうしても出てくる。アジアの国には自らの歴史と民主の建設を結びつけて、自らの道を探し出すことが必要に なってくる。 西側の言うところの「民主」を押し付けようとすると、予想外に悪い結果を及ぼすことがある。 民主を建設する過程において、自らの国情に あった「民主」を見つけ出すことが大事。これは現在、日中が直面している問題である。そして、中国は民主を建設するのにより多くの困難がある。
交流の阻害要因をいかに減らしていくのかが重要である。 民衆が観光であろうとビジネスであろうと交流を行う過程で、その阻害要因を減らしていくことは可能だと思う。
日中を基礎にしながらアジアの価値観の共通性を見出し、新しいアジアの価値の創造、コンセプトビルディングを構築する。
交流するにあたっての相互連携、政治、経済、文化、若者の交流が必要であり、また、それらのシナジー効果を発揮させるのが大事だ。交流の阻害要因が増えるのを防ぐべきだ。
日中間の経済は、一方通行の交流ではない。技術開発、企業連携の展開など、拡大型だ。
新アジア主義について、経済面の交流と、それを実現させるインフラの整備、会社法の制定などが必要になっていくのはないか。通貨金融協力も必要だ。こういった問題も議論する必要があると思う。
交流の基礎は、相互尊重だ。これを拡大すればアジアの共通基盤を築けるのではと考える。
日本の政治家(中川さん)から新しいアジア主義という言葉をきいたのは初めて。地理的に非常にフレキシブルであって、アジアという地 域、経済の動態、人の交流など、既に主なプリンシプルが指摘されていると思うが、それは平等のパートナーシップ、垂直ではなく水平な関係をオープンでイン クル-シブに進める。あくまで、ここでの主役は民間セクター。政府がやることはルール作りであり、行動規範を制定するだけだと思う。
アジアの中で、アジアの各国がどういった国を作りたいと考えるのか。500年のスパンで見た場合、ヨーロッパにおける国家の形成と、アジアにおける国家形成では、その過程がかなり違うという研究結果がある。
ヨーロッパの場合は、戦争の能力をまず高めていき、そして経済の基盤を築き上げていった。アジアはそうではなく、こちらも500年スパンで見た場合、日中 お互い国を拡大するのではなく、国内の繁栄をまず第一と考えていた節がある。「経世済民」といった言葉があるが、この知恵は今でも活きていると思う。こう いう言葉をキーワードにすれば(日中共に共通している知恵なので)、お互いが共有できるビジョンが描けるのではないか。
では、「新しいアジア主義」について。
本当のところ、「新しいアジア主義」というのがまだあまりわかっていない。最初にこの言葉を聞いて、すぐにすんなり分かる人はいないと思う。
ヨーロッパとアジアを比較することについて、昔、日本のある企業の幹部の人にいろいろ話を聞く機会があったが、フランス人、またドイツ人は、自分たちが 「フランス人」か「ドイツ人」というのではなく、自分たちは「ヨーロッパ人」という認識を持っているが、アジアではそうはいかない。ヨーロッパでは54年 もかかったが、共通の通貨ができた。ヨーロッパ内では、交通の便も非常に便利で、電車や飛行機でどこにでも行ける。
70年代から80年代にかけて、中国が空港施設を整備していた時代、アメリカ人はボーイングの売り込みに来たが、なかなかうまく話し合いがいかなかったと いうことがあった。 そのとき、日本の三菱が日本から飛行機を買ったらどうかという話を持ってきたが、上海と日本の間で結局取引は成立しなかった。
しかし、日本はアメリカとうまく協力しているようで、日本はアメリカから部品を輸入して、機体や部品をいろいろ組み立てて生産している。
ヨーロッパとアメリカは、アジアに「第三極」ができることを喜ばしく思っていない。また、ヨーロッパは、アジアが一体となるのは不可能だと思っている。こ の「第三極」を形成するにあたり、軸となるのは、中国、日本である。人口から言えば、中国はもちろん大国だが、総合力から言えば、中国は大国とはいえな い。GNPからいうと、日本は中国の4倍である。中国が大国となるのはまだまだ先である。
また、ヨーロッパとアメリカは比較的近い関係があるので、人々の考え方が似ている。
新アジア主義はおそらく実現すると思う。新アジア構想において、日本にとってはFTAも問題になってくるであろう。日本には20年前にはFTAはなかった はずだ。日本は島国なので、海に囲まれており、貿易が発達しているので、FTAは必要ないと過去日本人から聞いたことがある。
日本の円がどうなるか、中国は非常に注目している。それは影響が強いからだ。
私たちは常にアメリカの言いなりになる必要はない。アジアには貧困問題を抱える国もあれば、日本のように豊かな国もある。私たちは日本から学ばなければならないことがたくさんある。
政府は学者の理論に目を向けないかもしれないが、私たち学者は政府や役人に声をぶつけていかなければならない。そのような行動はアジアの発展にとって必要である。
アジアの発展というものは、真っ暗な森の中で徘徊して光を見つけるものだ。
APECが発足したのは80年代だと思うが、このような連帯を広げていこう、開かれたアジアを目指していこうという動きや、できるところから実践していくことはとても大事だと思う。
また、グローバリズムとアジアをどう考えるか、ヨーロッパとアメリカの関係をどう考えるか、これらについても考えていかなければならない。
実態の経済とか人の動きとかは、われわれが考えている以上に進んでいる。中川先生がおっしゃったのは、今起こっていることをまず整理して、進むべき方向を定め、また、明確な部分を示したと思う。
それは、デファクトコミュニティーができつつある証左ではと思う。
EUに関しては、共通通貨を導入するまで54年もかかっている。
遠い遠い先の希望の星として、統一通過を語るのはいいと思うが、この時点では無理であると思う。統合は簡単ではないと思う。
ただ、この統合は何の統合を指しているのか。政治連合としての統合をめざすのではなく、経済連合との統一だろう。EPA、共通ルールの作成ということだ。 中国が独禁法をもつようになったのはわれわれにとっては驚きだったが、政治統合を目指すのは難しいが、実態的には気持ちの上ではエコノミーインテグレー ションに賛同する国は多いかと思う。
97年の通過危機を境にして、あの頃までの日本はアジアを大事にしていたのは経済界であって、政界、行政はアメリカとの関係をより強く見ていた。しかし、 97年の危機は、日本にとって、アジアについて考える機会となった。あの時に、中国も拠出金を出して、アジアの復興に協力した。 日本、中国、韓国、それ ぞれ問題を抱えていたが、協力して復興を援助する姿勢は、それぞれASEAN諸国と協力していかなければならないという考えを持っていることを裏付けた。 連帯意識を持っているというのがはっきりした。
「新アジア主義」では、開かれた独自性という言葉を使っていたが、基礎として信頼関係、相互尊重というのは大事だが、共通ルールの作成にあたっては、相互 尊重だけというよりは、互譲も必要になってくるかと思う。それにはまず何よりも政治が強い意思をもっていなければならない。
500年前というのはルネッサンスの時代。その頃一番進んでいたのは中国の文明。アジアのルネッサンスもあるのではないかと思う。ヒューマンバリューのパーセプションというのは独自にあると思う。
歴史を勉強、分析する価値は、未来を描くためにある。
私たちは知識があるが、しかし私たちはそれで賢くなったのか。
イスラムの60%はアジアにある。そういった国とどういったパートナーシプを築きあげるのか。われわれの年代よりも、若者同士の交流が波及していくのがグローバルアジアにとって必要だと思う。
アジアには東アジア、南アジア、中央アジアがあり、こうした多くのアジアに新アジア主義を唱えるのは、その実現性に疑問がある。東アジアは現実的だと思 う。それは歴史、文化で共通認識があり、経済協力が盛んなので、実現できるかと思う。EUはヨーロッパ共同体を基礎として作り上げてきた。東アジアという のをまず作ってそこから広げていけばいいのではと思う。
テーマを変えたい。具体的にどう協力していくか。
中国、アメリカには中米による教員のトレーニングコースがある。これは、中国とアメリカの仲が非常に良かったときにできたプロジェクト。中米関係が 悪くなり、どうすればいいのかとなったときに、民間が何とかしないといけなくなった。悪くなった原因として、お互いの国民が偏見をもつようになったという のがある。それはメディアの影響、そして先生の影響。先生が偏った考え方を生徒に教える。だから、教員のトレーニングでこういった問題を改善していこうと いう目的で、このプロジェクトを発足させた。隔年で、アメリカの大学の教授15人が中国に来て、北京で一週間滞在して、教授同士交流して、また中国の文 化、経済などを視察し、また、ほかの都市も訪問して中国を全体的に理解してもらう。3週間の視察研修を通して、客観的な中国を知ってもらう。そして翌年 は、中国から15人がアメリカに行く。このプロジェクトは今も続いており、非常に効果が上がっている。これは日中でもすぐやりたければ実現できると思う。 私はこのプロジェクトを日中で立ち上げたい。
カントは、一番難しい職業は、政治、教育と言った。政治とは不完全な人間が不完全な人間を統治しようとすることであり、教育も不完全な人間が、不完全な人間に教えようとするからだという。
政治面の交流、文化、経済にどのようなシナジー効果をもたらせるのか。
交流の内容をどういうふうに充実させればいいのか。
日中関係は二国間の関係として考えるのではなく、アジアの中でとらえる必要がある。
今行われている大交流を円滑に行っていくインフラの整備をどのように行っていくのか。これはアジアの中でみんなでやっていかなければならない。フレキシブ ルなコラポレーションが必要だ。アジアは多様性があるので、一律に論じるのは難しい。これはアジアの特徴であり、ヨーロッパと異なる点である。アジア全体 のひとつの大交流という中で、エリアを形成しつつあるので、いろいろ組織を作ってやるやり方もある。 文化、人などの交流、相互理解をどう進めていくかの 交流だ。 経済交流は進められるが、ほかの交流は進んでいないという問題に直面している。この点で、政府には一定の役割がある。それは、若者、研究者、先 生の交流で、こういったのはどんどんやっていく必要がある。それは二国間でやってもいいし、フレキシブルにやっていかなければならない。ただ、そういった ことが大事であるということ自体をもっと発信していかなければならない。
今年で2回目のアンケートだが、今年の結果で、全般的な雰囲気があまり良くないというのは現在の状況を反映していると思う。 中国の人は「日本に行ったこ とがない」が圧倒的に多い。もう少し、中国の人に日本に来てもらうように政府は働きかけるべき。卒業旅行など、学生旅行を活性化してはどうか。ビザの問題 も同時にある。自分はビザ問題についてこれまで日本の政府関係者にも働きかけてきた。中国航空会社の不満は、便数を増やして日系航空会社は利益が出るが、 中国は利用率に余裕が出てしまう、それはビザ問題に起因していると思っている。しかし、アンケート結果を見て、心強く思うのは、どのような状況下であれ 「民間交流を必要」としている声が非常に多く、日中の将来に明るい展望を見出すことができる。
ヨーロッパ内はたしかに移動は便利。アジアがあそこまでスムーズになるのは難しいが、せめて国内線か国外線かといったのを役所で線引きするよりは、民間、利用者の視点で考えてはどうか。それによって利便性がもっとアップする。
2009年に羽田にもう一本滑走路ができるので、これを機に、日中の主要都市には頻繁に飛行機が離発着するという環境にしたい、またそうなる必要があると思う。
ビジネス界の方、特に航空界の人は非常に明確なアイデアを持っている。中国人の東南アジアの旅行がいちばん多いのは安いから。日本に行くのが一番高い。聞 いたことがあるのだが、日本の航空券は金額の最低ラインが決まっているらしく、あまりディスカウントできないというが、本当が。日本のことが別に嫌いだか ら行かないわけではない。日本は桜、温泉など、中国人にはとても魅力的。チケットさえ安ければ。そして、ホテルも高い。こういう要因が、日本に来ない理由 となっている。このチケット、ホテル代をなんとかして欲しい。
以前、学者同士で専門的な一週間の報告会を行った。(北京国際関係)会場はとても緊張した雰囲気だったが、議論が活発で、とても有意義であった。もっと良 い研究者が中国に来て、相互交流をする必要がある。 世論調査の結果でも、相互の知識が欠けているとの結果が出ている。双方において、実質に正しくない部 分、誤解の多い部分を出し、メディアも含めて、相互理解を深めていってはどうか。例えば、中国人が思っている「日本の軍国主義の復活」は、日本人にとって はありえないと言う。日本人が思っている「中国に対しての脅威」「核兵器で攻撃」などは、中国人には考えれられない。中国はいかなる国に対しても核を使用 しない。
シンクタンク同士の交流ができればいいと考えている。
政治の面で相互理解していくのは重要。政治家同士の交流、メディアの交流、文化交流、いろいろな交流を多層的に展開して、シナジー効果を導き出す、そのようなプログラム作りが必要。
われわれの日中関係、またアジア関係を処理するには、豊かで多面的な文化や特徴ある部分を受けていく度量も必要である。アジアの人間の性格には、非常にいい面があると思う。度量の広い見方で対応していく必要がある。
日中に関してはコミュニケーション不足。いろいろなレベルでの交流には賛成。民主という面で、私が所属している政治協調会議というのがある。政治協調会議 は、いろんな人がいろんな意見を議論し合う。これも民主の一つのルートだと思う。われわれ(日中)の中に阻害関係があるのではあれば、意見を交換し合えば よい。
中国と日本との間の阻害要因をどうやって減らしていくのか。それは相互に友人を作ればいいのではないか。われわれには友好の歴史がある。友人になってこそ率直な意見を言い合うことができる。
日本人による、日本の文化、日本の国民感情を紹介した本を出版したらどうか。今そのような本はあるが、あまりおもしろくない。 中国では日本の品位、道徳 についての本はあまりない。自分が日本について読んだ本がある。ひとつは、1898年の新渡戸稲造先生の本で、「武士道」。この本から私はいくつか日本に ついて学ぶことができた。非常によい内容だと思ったが、中国人にとってはあまり新鮮ではなかった。2冊目は、アメリカ人が書いた「菊と刀」。もう60年以 上も前の本。3冊目は、1928年、当時、国民党の人が書いた本、日本に留学した状況を述べた本。しかし、これらの本で知った日本人像は、今の日本人と同 じなのか。だから、現在の日本人が日本人について書いた本を読んでみたい。
日本の書店では、中国に関する本というのは、どうも差別的であるとか中国が嫌いとかという内容のものが多かった。中国に関して正しい本を出して欲しい。 また、中国人にも中国について書いてほしいと思う。
中国人が日本について書くときは、どうもアメリカ人の本の影響を受けているような気がする。
一番大きな問題は、お互いに対しての研究が足りないということではないか。もう少しつっこんだ研究してほしいと思う。日本の中国に対する研究というのは不 足していると思う。私たちが使っている資料が共有できるはずなのに、それが共同研究まで発展していない。歴史に関しても中国のマイナスの面を強調している ような気がする。客観的な研究をしてほしい。そうでなければ、読者はその本からマイナスの知識を得てしまう。中国には多くの日本人学者がいるのだから、彼 らも日本に関しての客観的な本を作成してほしい。
日本人自身も日本人とは何かをもっと知るべき。情報や書籍の交流がいかに少ないかと思う。
本の数でいうと、日本では中国に関する本はかなり多く出ている。日本は言論の自由があるので。ある一部の見方しかないというのはまちがい。しかし、読む方(本を選ぶ側)によって、本の内容が偏るということはもちろんありえる。
日本人が書いた非常に良い内容の書籍はあるので、それを翻訳していく必要はある。
現代小説とかが翻訳されているとわかりやすいのではと思う。
また、韓国の映画が今人気であるが、それはときに政治の力以上に相互の理解促進に役立っている。
日本の傾向というと、特に若い人に読書時間が少なくなってきている。情報経路はテレビが圧倒的。どうやって人々に活字に情報を得て、考えるようにしていく か。行間の読み方を知らない若者が多い。 テレビメディアという瞬間的なメディアで意識が形成されていくこのプロセスをどうにかしていかなければならな い。
本屋には良い学術書がない。本屋には売れそうな本しかない。
世論調査によると、テレビ、ネットはもっとも影響力が多いかと思う。しかし、インテリ系は書籍もよく読む。例えば、来年国交正常化45年を祝うというので、双方協力してよいプログラム、ドキュメントを制作してはどうか。
アジアの交流を推進するという点で、APECの機能をどう考えるか。アジアの枠組みを改善するという点ではどうか。
東アジアには各国共通して考えなければならない問題がある。例えば、鳥インフルエンザ、海上問題、安全保障など。しかし、今のところその事務局がない。アセアンプラス3では、最近やっと日本、中国、韓国から人を派遣して事務局を設立しようという動きが出てきた。
アジア版のOECDのように、小さな事務機構をつくるとことは十分に考えられるのではと思う。
APECというのは、1990年代にはとてもその役割は大きかったが、通貨危機以降はそのモメンタムを失ってしまった。しかし、インフォーマルな形でもいいので、各国の首脳が意見を言い合う「場」があるということは非常に大切だと考えている。
OECDのように非常にがっちりした組織を作るのは難しいが、連絡場所として小さな組織を作っていき、それで機能すればもっと価値を付加させていき、拡大していけばいい。
首脳が集まるという場をつくるという意味で、アセアンプラス3は続けていかなければならない。
今後のフォーラムの運営、方針など、何をしていかなければならないか。
このフォーラムの名前をより多くの人に知ってもらう。年に1回では少ないと思う。共催など、名前を載せて広げていくというのはどうか。
まず結果を精査して、実現できるものは形にしていくのが大事。
中国側から日本についてよくわかる書物が少ないというのがあったので、それには対応していくべき。ひとつひとつ小さなことから実現していく。
チケットのディスカウントもそうだ。
交流の場や、それを処理する会合などを開いてもいいと思う。 このフォーラムを年に何回も開催するのは大変だとすれば、例えば、歴史認識の問題に関してな ど、このフォーラムの名の下に、テーマ毎に小委員会や専門家会合を頻繁に開催してはどうか。研究会、専門部会などである。
たくさんできることがあると思う。個人的に教育関係に興味がある。教育の面でもっと交流を進めて行きたい。どういった課題、解決方法があるのかを話し合っ ていきたい。日本の大学とも協力関係があるが、(早稲田大学など)、中国の学生(博士課程)が日本の学者というのは、理論の要求よりももっと詳細な要求を 求めてくる、それに学生がまいっている。日中学者のやりかたが違う。だから交流を深めていく必要がある。
ビザの問題については、私たちがいかに不便を被っているのかを知ってほしい。
不法滞在はこのビザ問題があるのではないか。日本では合法的に強制送還させられるというのがある。ある意味、これは正しいが、これが不法滞在につながっていると思う。アメリカの難民政策とは異なる。
2006年08月05日 17:13