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4月25日、5月15日に都内にて、「第8回東京-北京フォーラム」の開催にむけた第1回、第2回勉強会が実施されました。この勉強会は、今回の「第8回 東京-北京フォーラム」を両国関係に横たわる障害を解決の方向に進めさせるため、事前に関係者間で議論する内容を煮詰めることを目的に実施しました。第1回、第2回と連続して開催された勉強会には、フォーラムの実行委員・パネリストをはじめ、言論NPOの会員も含め約60人が集まり、安全保障や経済連携の点で日中が直面するさまざまな課題の解決のために民間対話が果たすべき役割について真剣な議論を交わしました。
第1回の勉強会は「東アジア・太平洋の安全保障、海洋問題」をテーマに防衛研究所所長の高見澤將林氏、他4名の研究員の方を講師として迎え、日中関係において現在一番の課題となっている尖閣列島や海洋での問題について意見交換を行いました。
冒頭で、代表の工藤より「日中両国が尖閣問題をはじめ領土問題でセンシティブになる中、今回の「東京‐北京フォーラム」が様々な障害を正確に認識し、その障害を乗り越えるような対話にしたい」と今回の安全保障対話の意義を強調しました。その上で、本年の日中共同世論調査には、領土問題の有無、東アジアでの軍事紛争の可能性、安全保障の対話のメカニズムについて改めて問う設問を加えたことを伝え、「日中の政府レベルの議論より半歩前に進んだ民間対話にしたい」と続けました。
続けて、防衛研究所所長の高見澤所長及び研究員4氏から、東シナ海、南シナ海など東アジアにおける海洋での紛争問題、昨今の中国の軍事動向や軍拡の実態、米国の軍事戦略のリバランス等について分析と認識が述べられました。これに対し、工藤より安全保障対話の議論の中で中心的なトピックとなる東アジアでの海洋における軍事衝突の可能性や、アメリカの軍事戦略の多角化が与える影響について質問が出され、高見澤氏や研究員の方から率直な意見と実例を踏まえた見解が示されました。
会場との質疑応答では「東京‐北京フォーラム」の安全保障対話のパネリストである山口昇氏(防衛大学校教授)やオブザーバーとして参加した言論NPO会員である加藤隆俊氏(元IMF副専務理事)をはじめとした参加者から次々と東アジアの安全保障上の問題についての意見が出され、今年の対話で話し合うテーマを念頭にした安全保障面での日中間の障害について真剣な議論が交わされました。
最後に宮本雄二氏(前駐中国特命全権大使)が今回の対話のミッションについて「領土問題などに世論が過剰反応を示す中、この民間対話が障害に真正面から向かい合い、冷静かつ実のある議論を行い、その内容を広く両国民に伝える事によって日中関係を少しでも健全な関係に発展させて行きたい」と語り、会を締めくくりました。
続けて5月15日に開催された第2回目の勉強会では前・後半にわかれ、①中国経済の今後と②TPP・FTAなどの経済枠組みについて、中国経済に詳しい田中修氏(日中産学官交流機構特別研究員)と現役の経済産業省通商局長の佐々木伸彦氏が講師となり実施されました。
経済対話には毎年日中両国の経済政策当局者がパネリストとして参加し、今年は世界的な経済危機の中で日中が果たすべき役割や東アジアの経済連携の進捗状況などについて議論する予定で、「東京‐北京フォーラム」の副実行委員長である武藤敏郎氏、福川伸次氏を中心に財務省・経済産業省OBの言論NPOメンバーも交えながら真剣な意見交換が行われました。
まず、勉強会の前半では、田中修氏から昨今中国が抱える経済構造の転換、社会の安定性、労働者の質の向上、省エネなど様々な課題とそれに対する中国政府の取り組みについて説明が行われました。また、後半では、日中韓FTAの年内交渉開始の実現について合意した先日の「日中韓サミット」に出席した佐々木氏からアジア・太平洋の経済連携について、現在の状況と今後の見通しが語られました。佐々木氏からは中国が日中FTAの実現について、積極的であったこれまでの姿勢を政治的な要因もあり転換してきている点を指摘。それに対し工藤はそのような転換点の中で、日中両国がどのように経済面で連携を強化するべきなのかという点について問いました。
最後にこの経済対話の責任者でもある武藤敏郎氏から、「今回の勉強会で、経済対話で議論すべき点がクリアになってきてきた」としつつ、「継続して関係者間できちんと議論を煮詰め、フォーラムに備えたい」と伝え、勉強会を締めくくりました。
今回の勉強会で議論した内容を基に安全保障対話、経済対話の議論をつめ、開催まであと2カ月を切ったフォーラムまで準備をすすめていきます。
「第8回 東京-北京フォーラム」は、7月1日~3日の3日間の日程で、東京都内において行われます。今後の進捗についてはウェブサイトにて公開しますので、是非ご覧ください。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中) また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。