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8月21日午後、北京において開催中の「北京‐東京フォーラム」で分科会「メディア対話(後半)」が開催されました。
日本側からは、会田弘継氏(共同通信社編集委員室長)、山田孝男氏(毎日新聞東京本社編集委員)、藤野彰氏(読売新聞東京本社編集委員)、西村陽一氏(朝日新聞社編集委員)、高原明生氏(東京大学院法学政治学研究科教授)が、中国側より李方氏(Tencent常務副総編集)、王躍春氏(新京報社執行総編集)、王発恩氏(新華通信社国際部副主任)、劉北憲氏(中国新聞社社長)がパネリストとして参加しました。司会は加藤青延氏氏(日本放送協会放送局解説主幹)、喩国明氏(中国人民大学新聞学院副院長)が務めました。
まず、会田氏は、今年日本で起きた東日本大震災と福島原発事故、中国で起きた高速鉄道事故を挙げながら、日中双方のメディアが新しい公共空間で批判にさらされた事を指摘し、今後のメディアの役割を考えるにあたって、「メディアを巻き込んで、市民の前に立って本来の機能を果たすことができるかという問題に直面している」としました。
続いて発言した王発恩氏も、東日本大震災や中国での鉄道事故を挙げながら、国と市場のどちらが重いのかということを第一に考えながら、社会の公益を強調しながら、客観的に報道を行う必要性を指摘しました。そして、話し合うだけではなく、行動しないといけないのではないかとの指摘がなされました。
2人の発言を踏まえて、喩国明氏は、情報を集中的に見せることへの危惧を示し、情報を取捨選択することの必要性を指摘しました。同時に、代弁者としてのメディアは時代遅れと断じ、単なる代弁者ではなくバランサーである必要があるとしました。
次に、西村陽一氏は、メディアの責任という観点から、3月に起こった原発報道について報道することで起こるパニックを抑えようとする気持ちと、積極的な報道で多少のパニックは仕方ないという判断の間で、どのように報道するかということを今でも悩んでいるとし、中国の鉄道事故について、メディアの関心がグローバルに広がっていく事を指摘し、尖閣や竹島とは違い、国境を越えた「安全」の問題について、中国メディアの報道は変わっていくのか、との疑問を投げかけました。
続いて、加藤氏は放射能汚染について、被害を受けるのは住民なのに、どれだけの危険があるのかという観点での報道が無かったのが非常に歯がゆかったと指摘し、こういう安全に関する報道について、中国側はどう考えているのかとの疑問を投げかけました。
これに対して、王躍春氏は、東日本大震災の際に、日本政府の対応が遅れたこと、また、震災時に日本の市民の秩序を保つ精神、冷静さを報道したことを挙げ、震災について、どう報道するのか、我々は専門のジャーナリストとして、自分のモラルを守らなければならないと指摘しました。
これまでの中国側の発言、さらにはこれまで自身が関わってきた藤野氏は、日中ジャーナリスト対話での日中双方の対立点として、「誰のために報道するのか」という点を挙げました。日本の場合、「国益に抵触することがあったとしても国民が当然知るべきものは、最大限取材して報じる」が、中国からしてみると、「問題が大きくなればなるほど、国益を損ねるので控える傾向がある」と日本との違いを指摘しました。しかし、かつての中国メディアと現在の中国メディアの変化を指摘し、「報道が何のために存在しているのか、という基本的な問題について、日中のジャーナリストがある程度のコンセンサスを得られたら、より良い仕事ができるのではないか」としました。
ここで、ジャーナリストとしてではなく、中国の専門家として参加した高原氏からは、自らを悪魔化しての発言である旨を断った上で、メディアは市場と国家の狭間にあるもので、その目的の1つとして、人々を啓蒙していくことであり、メディア自らのアイデンティティや役割という目的があるはずだが、日本のメディアの人たちに理解されているのだろうかと疑問を呈した上で、本来のメディアの存在理由を強く意識した仕事をする必要があるのではないか、とかなり厳しい指摘がなされました。一方で、中国側のメディアに対しても、漁船衝突事故に対して、日本の大きな海上保安庁の船が、中国の小さな船にぶつかっている絵が報道された件について、訂正記事を出されたのか、何を根拠に報道されたのかということについて疑問を呈しました。
山田氏からは、高速鉄道事故について中国では報道の規制がされているにもかかわらず、不利益を無視して事実を報道しようという姿勢に、何を報道すべきか、という使命感を持って報道していることに共感を示しました。
これらの意見に対して、会場を交えた質疑応答に移りました。会場の中国人の質問者からは、日中双方のジャーナリストが同じような悩みにぶつかっていることに気付かされ、誰のために報道しているのか、メディアの原点は何なのか、日本人、中国人にかかわらず、読者に対して責任をとれるような報道をしたい旨の賛同の意見が述べられるなど、会場を交えながら活発な議論が行われました。
カテゴリ: メディア対話
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