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司会: 国分良成氏(慶應義塾大学法学部長 教授)
それでは、全体会議を開始します。慶應義塾大学の国分です。第7回北京-東京フォーラムは、本日この全体会議をもって終了いたします。みなさまのご協力に深く感謝申し上げたいと思います。昨日午後は各分科会とも非常に活発な議論が展開されたと聞いておりますが、全体会議の場でどのような議論があったのかご披露いただきます。北京-東京フォーラムも7回を重ねました。日中には様々な問題がございますが、このような民間の対話を進めて少しでも両国関係をよきものとするため、この会合は大きなステップとなってきたわけでございます。全体会議におきまして、次回に向けての課題も含めて総括していきたいと思います。
趙啓正氏(全国政治協商会議外事委員会主任)
みなさんおはようございます。趙啓正であります。本日私のテーマは両国の関係改善の厳しさを再認識することです。このフォーラムの7回目の世論調査によれば、中国民衆の日本への好感度が急に10ポイント下がっています。これまでは徐々に上がってきていました。にもかかわらず、今回は下がりました。一方日本側に目を転じますと、やはり好感度が6ポイントも下がっています。この現象に憂慮を覚えていますし、民間交流の脆弱性を認識しています。
一衣帯水の隣国として、中日両国は地理的に近く、文化が似ている、これは友情の土台です。2000年の友好と50年の対抗といいますが、そのあとには60年の努力が続いています。中日は隣国であると同時に、東西という関係でも捉えられます。日本は西洋的ですが、中国は東洋です。これには積極的側面と消極的側面がありますが、消極的側面は欧米の価値観で対外政策を決定することです。日本の2人の首相はかつて価値観外交と言いましたが、その後の首相は口にしなくなりました。また、中日は南北関係にもあると思います。先進国と途上国ということですけれども、中国は世界2位の経済大国ではありますがそのレベルや内容はまだ日本に劣っています。先日韓国で行われたあるフォーラムに参加しましたが、そこの参加者が米中「二大国」ということを言い出しました。これはアメリカが言い出したものであり、受け入れられません。中国と日本は東西・南北関係のほかに依存関係にもあります。現実に経済的に関係は深まっています。中日は競合することもありましたが、相互依存関係にあります。オーストラリアや韓国との関係は戦略的関係ではありません。彼らはそれをアメリカに求めています。米中日は経済では等辺三角形ですが政治軍事では不等辺です。このように分割することに慣れていない人もいるようです。正しく両国関係を捉えることは、政治家の担う責任だと思います。日本の利益から見ても、両国が友好を図ることは当然です。問題を捉えることは未来からものを考えるということであり、正しい道だと思います。2000年の友好と50年の対立と60年の取り組みです。戦えば傷つき和すれば共に栄えるということです。では、2000年の友好とは、50年の対立とは何だったのでしょうか。2000年の友好は文化の交流だった思います。隋や唐の時代に中国はさまざまなことを日本に教えました。中国人としては、文化において日本からもフィードバックもあったと思います。日本で漢字を使ってつくられた言葉も中国に輸入されています。法律や経済・環境の分野などに多くあります。日本がヨーロッパから仕入れた概念を、漢字を使って中国に伝えました。このような慣用句は1910年時点で980ありました。これを放棄することができたでしょうか?2000年間は相互勉強の期間です。50年の歴史は、日本の侵略と中国の対抗です。日本の青年世代が認識すべき問題ですが、最近横浜市で、来年春から159の市立中学校で戦争責任を否定するような歴史教科書を使うと言っています。中国の映画では、軍事戦争を扱うものが多く取り上げられていますが、反戦同盟のストーリーも取り上げられているようです。
中日関係の難しさは多くの人が正しく認識していると思います。多くの人が重要だと認識していますけれど、どう問題を解決するかは道筋をつけなければなりません。いかに大局的に中日関係を扱うかが取り組むべき方向です。歴史問題を正しく扱い、領土問題をどう扱うか正しく判断すべきです。田中角栄先生と周恩来首相が会ったとき、周首相は、領土の問題にこだわっていては何も発表できなくなってしまうから子孫の世代に任せたらどうかといいました。角栄先生もそうしようと言ったようです。文章には書いてありませんが、なぜ我々の先達が決めた道筋を踏み外そうとするのですか。中日関係を悪化させることをしているのですか。
中日の政治家が、関係改善に積極的な姿勢を持つというのは利益共通性を開発することです。経済構造の補完性をつくり、ジオポリティクスな政治に向かって手を携えていくべきだということです。領土問題を慎重に対処し、突発的なことが起こらないようし、一方的なことをやってはいけません。無用な行き過ぎた言い方はいけないと思います。正しく中日関係の摩擦に対処すること、現実的なことで両国関係をだめにしないこと。緊張を高めるような動きに出ないこと。これは当然のスタンスです。
どうもありがとうございました。
山田啓二氏(全国知事会会長、京都府知事)
全国知事会の会長をしております京都府知事の山田です。今回のフォーラムにつきましては、日中の世論が悪化しており、色々な事件が起こっている中でアジアの未来と経済再構築に向けていかにすべきかをテーマにしています。この対立を前進に変えるというのがこのテーマの主題になっています。この問題を解決するにあたって、もう一つの視点を提案させていただきたいと思っています。それは、確かに今日本海の波が高い。しかし、このフォーラムがその波を静める役割を果たすとすると、波の影響を受けない部分をしっかり作っていくことも大事ではないかと思っています。つまり、日本海の波は高くても日本海の底は波には影響されないのではないでしょうか。その部分を作っていくことが波を静める効果だけでなく、日中間の関係を維持する前提になるのではないかと申し上げております。それこそが、地方の役割ではないかと指摘したいと思います。つまり、地方におきましては、一つには、国家間の対立ということを直接は担当していませんから、地方の関係というのは顔がよく見えますので事件に左右されにくいのです。日本が嫌いでも京都はいいねと言ってくれる人がいますし、四川の大地震の際に派遣された人も地方公務員です。厳しい事態でも、日本から中国へ渡航する数は12.5%も増えております。上海万博に大勢の地方公共団体が参加していました。中国側はそれを歓迎していただきました。こうした顔の見える関係を地方は築けます。地方は具体的な問題を共有することができます。例えば観光・震災・復興です。特に環境問題、高齢化問題という日本と中国が避けて通れないことについて具体的に連携することができます。日本ではまさに環境問題と高齢化問題を担っているのは地方公共団体です。具体的な課題解決のノウハウをもっているのは地方公共団体です。中国では発展が急速であり、その分かえって、中国と共同の取り組みができると思っています。高齢化の問題につきましても、人口ボーナスという言葉あります。日本も一貫して生産人口の伸びが高かったわけですが、マイナスに転じて参りました。そして、経済の停滞が深刻化しています。中国も人口ボーナスですが、2010年代の半ばにはいよいよ高齢化の時代に入っていく。全く対立なくノウハウを共有できるのが地方公共団体だと思っています。まさにこうした関係を築いていくことで、日中関係の土台をつくることができます。3つあります。1つは地方の協力関係を確固たるものとすることです。現在、姉妹都市が300ほどありますが、日本は1800くらい、中国は3000くらいの地方公共団体があります。この姉妹都市の数を1000に高められれば、協力関係は飛躍的に高まると思います。これを目指したいと思います。2つ目は、修学旅行です。中国からは増加傾向にあり3万人を超えました。これが10万人台になりまして、若い世代が交流するようになれば、土台がさらに高まってくると思います。ぜひとも教育旅行10万人を目指したいと思います。3つ目は環境・高齢化について、地方同士のプラットフォームをつくってはどうでしょうか。
日本の国政というのは、毎年のように総理大臣が代わり安定していません。しかし、地方は平均在職期間は8-10年くらいあります。安定的に友好関係を築けます。私も10年目に入っているところであります。
こうした地方の関係を築くには、地方で役割を認識する必要があります。あくまで、国の関係は国として、地方の関係は地方として、自覚を持たなければならないと思います。私たちはそういう自覚を持って望みたいと思います。国家の方も、地方の役割を理解していただきたいと思います。つまり、地方を規制するのではなく、国家が地方交流を推進する。そういう思いを持っていただければ、今回のテーマの地方協力を作ることができると思います。地方対話は4回目を迎えました。新たな地平に向かって、第10回大会の地方対話まで進めていきたいと思います。しっかりとした議論をつくっていきます。ご清聴ありがとうございました。
陳 昊蘇氏(中国人民対外友好協会会長)
尊敬するご列席の友人の皆様こんにちは。いまや第7回フォーラムの成功した歴史が表されました。会議に来たときは憂慮を持っていましたが、一日余りの交流で善意と友好を感じることができました。また、中日関係やアジアの未来に自信を持つことができました。一昨日のパーティーでも言いましたが。当初設定した「10年で根本的な改善をめざす」という目標まで残りはあと4回です。このフォーラムの機会を利用して低調から脱することを勝ち取っていきたいと思います。
来年は中日国交正常化40年にあたります。両国関係を発展させる上で重要な節目の年です。現在、中日ではさまざまな交流が展開していますが、国交正常化後の歴史について権威ある総括をしてはどうでしょうか。そこで行われるイベントで発展推進力を集めることが必要です。第8回のフォーラムは東京で40年の歴史を総括することもよいと思います。中日関係には紆余曲折がありますが、両国関係は発展できるというメッセージを発することが重要です。民衆交流に注目し、政治家や青年が係わることが大事です。また、再来年は中日の友好都市締結40年です。現在、300ほどの自治体で友好都市協定が結ばれております。これは大きな成果です。中国の地方公共団体の連合会と日本の知事会、市長会などが活躍しており、私たちの間でよいパートナーシップを結んでおります。これからは新しい段階に入る努力をすべきです。中日友好都市大会を実施できるように、権威あるメカニズムの構築を目指したいと思います。地方協力における新しい成果を報告できることになると思います。
3年後、つまり2014年、フォーラムは日本で第10回会議を開催することになります。この友好プラットフォームを総括することができます。活動を総括し、グレードアップすることを望み信じます。中国の経済パラダイムシフトの時に、北京-東京フォーラムは、10年の歩みを回顧することができます。ベテラン参加者の一部は出席できないかもしれませんが、もっと若い人たちにドアをオープンにして参加してもらい、素晴らしいメッセージを発信してもらい、次の10年に取り組んで頂く。そうすれば、中日関係は次のステージに入ることになります。
最後に、詩を披露したいと思います。(※日本語解説:)歳月は河のように下っていき、7年流れ続けた。北京-東京フォーラムは友好の成果をつくり、アジアの平和世界の進歩は限りなく開かれた視野となり、一衣帯水を用いてすばらしい春秋を描いていこう。
石破 茂氏(自由民主党政務調査会長)
自由民主党政務調査会長の石破です。
私は日本国で衆議院議員になって25年になります。その間に、総理大臣は17人代わりました。あと1週間くらいで18人目が登場する予定です。かつて竹下登総理大臣が、歌手1年、総理2年の使い捨て。歌手は1年で流行らなくなる。総理は2年で交代してしまいます。総理が代わるので大臣ももっと代わります。4年前に福田内閣で3回目の防衛大臣を務めました。1年務めた後、麻生内閣で農林水産大臣を拝命しましたが1年9カ月の間で私は6人目でした。今度発足する政権はどのような政権になるかわかりませんが、日本と中国の信頼を築いていくために、我が国の政権は安定した政権でなければなりません。これは皆努力しなければいけないことです。我が国は議会制民主主義をとっておりまして、総理大臣を国民が直接選ぶわけではありません。知事は直接有権者が選びます。総理大臣を選ぶのは国会議員です。なぜ代わるのかわかりませんが、こういう国家を目指したいという思いを一つにして総理大臣を選んでいません。この人はかっこいいから選挙に勝てるだろうということで選んではいけません。どういう国家を作るのかということを総理になろうとする者が明確に示し、抽象論ではなく具体的に示し、思いを一つにするものが共に政権を作るべきです。そうでなければ、結果として日中の信頼性向上にもつながらないと固く確信しております。
いろいろな日中の関係の中で、安全保障は最も議論の多いところであります。常に論争が絶えません。私はまず軍人同士、我が国であれば自衛官になりますが、この交流が最も大事だと思っています。そして、お互いの軍艦であり戦闘機であり、装備の透明性をもってお互いが知ることだと思います。政治家は嘘をつくことがあります。しかし、兵器は嘘をつきません。長く国防をやってきましたが、必ずどの国にいっても軍艦を見るようにしています。思想が現れているからです。そして軍人同士は祖国のために命をかけて戦う人たちです。もっとも戦が嫌いなのも彼らです。その者たちの交流が最も大事だと思っています。軍事機密に触れない限りあらゆるものを見せなさいと言っています。残念ながら国はその透明性の確保が重要だと思っていません。とある母艦が訓練に入ったと言っています。国防白書には全く書かれていません。なぜ持つのかということも誰も明らかにしていません。1985年に日本はメルボルンという母艦をスクラップとしてオーストラリアから買いました。その時から研究が続いています。イギリスから学んだからに違いありません。なぜ持つのか、その目的を明らかにしないと、お互い疑心暗鬼になります。軍拡というのはお互いの疑心暗鬼がその一番の理由です。それが取り払われなければ、軍拡が止まることはありません。我が国の歴史を顧みたとき、国民に真実を伝えなくなったとき、過ちが始まりました。ロシアとの戦争の際、なんとかアメリカやイギリスのおかげで、あの大国ロシアに負けないで済みました。あのまま続けば、勝利できませんでした。なぜなら国力が決定的に異なったからです。しかし、国民に対しては勝った、勝ったと報じられ、ポーツマス条約を結んだ小村寿太郎は日本に帰って家を焼かれました。その後どんどんナショナリズムが高まり、対米戦争に至りました。そのときも国民は真実を教えられていませんでした。日本に何ができて何ができないのか。合衆国をはじめとする連合軍に何ができて何ができないのか。国民は全く知らされていませんでした。最初の戦いで勝てば、民主国アメリカは戦争反対という世論も沸き起こり、やがて戦争は終わるだろうという楽観的な考え方が国を支配し、我が国は壊滅的な敗戦を迎えることになります。
今回の東日本大震災から何を学ばなければならないのでしょうか。私たちはどこかであのような災害は起こらない、日本の原子力発電所は事故を起こさないと思い込んできたのではないでしょうか。なんとなく大丈夫だという神話を持っていたのではないか。私たちは、突き詰めて議論することを得意としません。理屈が多いと叱られます。私が典型ですが。
しかし、突き詰めて議論せず、その場の雰囲気に流されて下した決定でよかったことは一つもありません。嫌われることを恐れて、議論をしないことはよいことではありません。最後に、このあとご報告があると思いますが、冷戦が終わったから同盟が必要だと固く信じています。日米同盟がそうです。冷戦時代は東と西のバランス・オブ・パワーがきちんと効いていました。冷戦後はどの国がどこにつくのか極めてわかりにくくなりました。自由主義、民主主義を否定するテロリズムが発生しています。その撲滅のためには、信頼ある情報を入手することが必要不可欠であります。
多くの国と相互理解を深め、軍人同士の交流を深め、軍事の透明性を明らかにします。当面、そのような安全保障政策をとってまいりたいと思います。国によってやり方は異なります。これだけ多くの人口と民族、経済格差のある国をいかに治めることが大変なのかをよく承知の上で、本当の相互信頼を1日も早く作っていきたいと考えています。世界の平和と安定のために、両国が力を合わせることに1日も早くなることを祈っております。
魏建国氏(中国国際経済交流センター秘書長)
皆様おはようございます。このようなすばらしいフォーラムに参加できることをうれしく思います。ホットなディスカッションに大変な感銘を受けました。私の発言のテーマは、中日の貿易関係を新たな段階に高めようということであります。ニーチェはこう言いました。問題を見つけることは問題の半分を解決していることであると。当面、中日関係は極めて重要な時期に置かれております。今回皆様はさまざまな問題を提起されましたが、それら問題の根はどこにあるのでしょうか。私は中日両国のチャレンジについて申し上げたく思います。
まず、相互の不信頼です。信頼できない要素が高まっているということであります。近年中日両国の対話メカニズムは確立され、特にこのフォーラムは絶えず発展しております。このフォーラムが強いメッセージを発信し、中日関係において強いパワーがあります。しかし世論調査において、中日国民が互いを信頼しない感情が高くなったことが明らかとなりました。貿易関係を妨げることにもなります。ただ、この不信感というのは一時的なものであり、乗り越えられると思います。今後は相互の信頼感が高まり歴史的な高いレベルを超えると思います。関係が良い方向に向かうことは両国人民が期待することです。政冷経熱あるいは政熱経冷という局面を見たくないというのが大きなトレンドとなっています。
日本の政局の不安定性、これは中国の民衆にも影響しています。しかも日本は震災復興に時間がかかりますので経済の先行きを楽観視できません。復旧はしつつありますが、速やかに経済の復興ができるかというと確信を持てません。中日双方の伝統的な協力パターンが今後もさらに生命力を持つかということについては、いまや新しいモデルづくりが必要ではないかと思います。中日の協力は、大企業だけでなく中小企業も取り込まれているのか、知的財産権の保護が含まれるのかということも問題です。これが新しいチャレンジです。
中日関係にはよい方向に向かう傾向が表れ、中日の経済は補完性もあります。中国は膨大なマーケットをもち、豊富な労働力資源にも恵まれているので経済発展が進んでいきます。これに対し、日本は優れた技術や管理ノウハウをお持ちですから、これは経済貿易協力を進める際に強く意識されます。グリーンエコノミーは両国関係を促進します。連動経済を土台とした新しい経済発展のモデルです。この度の金融危機の勃発において、グリーンエコノミーの発展について考えています。これは持続可能な発展モデルであり、中国発展のパラダイムシフトになります。しかし残念なことに、中日双方の多くの企業はまだこのような得難いビジネスチャンスを捉えていないのではないかと思います。
中日双方がスクラムを組んで第3国のマーケットを開拓できるかということも重要です。お互いニーズをもっており、互恵を持ってして各自のメリットを生かせると思います。今、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカの開発が進んでいます。ともに世界に打って出るということは具体的・実務的な協力になり、成果が出やすいと思います。
中日両国の首脳はハイレベルな議論を重ね発展の土台を確立しました。アジアの発展はかつてないスピードで進んでいます。中日FTA交渉が波に乗るか、報告を提出できるかということが鍵になっています。FTAとWTOは違います。後者はグローバルなルールで、すべての加盟国に適用されます。しかしFTAは違います。両者で交渉がまとまれば両国の間でのみ優遇措置をとることができます。中日FTA交渉を進めていくべきだと思います。
来年は中日国交正常化40周年ですので、中国と日本の間で着実に具体的な中日間のFTA交渉の成果を出したいと思います。さらに、政治的な判断・理念をもって、二国間の部門別の障害を取り上げていくべきだと思います。それにより、戦略的互恵・ハイレベルな協力関係を築くことができます。
フォーラムを契機に、それぞれの議論を両政府にフィードバックしていくことはできないでしょうか。政治や外交、軍事、地方、メディアなど、我々の考えを各自の政府に提案し、意思決定する際に参照してもらうことです。このフォーラムはシンクタンクであります。シンクタンクだから、知恵を出すべきなのです。それは普通の知恵ではなく、決め手となるようなものを提案しないといけません。民衆レベルで真実がわからない人に事実を提供すること、また、企業に道筋を提供することも求められます。
ドイツのハイネは言いました。思想は行動に先行し、それは稲妻が豪雨に先駆けるのと同じであると。まず思想をもつことが大事です。
ここで、このフォーラムの今後についていくつか提案をさせていただきます。まず、来年までの間に、いくつかの地方レベルのサブフォーラムを開いてはどうかと思います。東京のみで2000人、などでは不十分だと思います。こんなに友好都市の数は多いのですから、選択して徐々にサブフォーラムを開催できる方向に持って行きたいですね。また、このフォーラムに中小企業が別枠・並行で対話できる場をつくることは、中日双方の中小企業が発展することを促すものです。さらに、北京-東京フォーラムが優秀な人材や専門家を蓄積した以上、そのストックを生かして、双方の貿易・関税・投資の関係者を組織して、中日FTA推進の一部としてはどうかと思います。それから石破先生もおっしゃいましたが、若者の問題ということがあります。今回、たくさんの大学生が出席しておりますが、若い人を組織して、友好の波が次々と前進する流れをもつことが大事です。
もっとたくさんお話ししたいですが、時間の関係でまた機会があればということにいたしましょう。今回の対面を通してお互いに努力する目標を目指し、次回東京で国交正常化40周年の年に議論を再開したいと思います。そして、議論を通して、中日関係の改善に全力を尽くしていきたいと思っております。
松本健一氏(内閣官房参与、麗澤大学経済学部教授)
みなさまこんにちは。私は内閣官房参与という役職についております。これはどういう経緯でなったかというと、民主党員ではないけれども、民主党の議員たちに歴史、日本の近代史、戦争になだれ込んでいく昭和の歴史あたりを集中的に講義をしてくれと5年前から仙谷由人、前原誠司、蓮舫さん、枝野さんに歴史講義をしてまいりました。そのため、政権交代がなされた後で、アジア外交と東アジア共同体の構想について具体的に考えてくれ、アドバイスしてくれということで、内閣官房参与に就いております。そのため、政治家ではなく思想的、歴史的にものごとを考えるということで関わっておりますし、アジアの未来というテーマについては、常に東アジア共同体ということを主張してきたわけであります。しかし、具体的に政治的な問題といいますと、3月にフォーラムの予備会談を行いましたときに、3月31日なので東日本大震災の20日後です。津波がきて放射能の問題がありました。胡錦濤国家主席が日本大使館に弔問に訪れて頂きました。温家宝首相は全人代の後であるにもかかわらず、東日本大震災、放射能事故の問題を深刻に捉えられ支援を申し出てくれました。にもかかわらず、日本の政治がうまく作動していなかったがために、非常な不満や反発を差し向けられました。結果として、日本政府の菅首相のメッセージという形で中国国民の支援とお慰めの言葉に対して、非常なる感謝をしており、政府と人民にお礼を申し上げたいといったという経緯になります。
私は民主党員ではありませんけれども、民主党に歴史講義をしてきたというわけであります。2年前に政権交代が起こった際、中国のオリエンタルモーニングポストに政権交代の意味は何なのか、どう変わるのか、という論文を出しました。そこで、日本の政治は国内的には官僚主導の体制から政治手動の体制へ大きく舵を切るだろうと述べました。国内的な変革としてはそういうことが行われるだろうということです。対外的な政策としては、明治18年(1885年)のときに福沢諭吉がいった脱亜入欧という路線ですね。アジアを抜けて西洋世界に入っていく脱亜論という本があります。125年前のそのような政策から、日本は一歩距離をおいた形でアジア重視という大きな転換をしなければならないことを、対外政策としてはするであろうと述べました。そういうこともあり、官房参与という仕事に東アジア共同体構想が取り上げられていきます。アジア重視というのは、日米同盟を無視することではありません。今まで、日米同盟第一主義をとっていたところからは、一歩距離をおいて日本の歴史自体を考える必要があるのではないかと考えております。石破さんのお話は防衛論としては肯定します。ですが、一か所だけ、日本人全体が考えているところで、政治対話の場でも申し上げましたが、先程、日本は日米戦争の敗戦というものを日本政府が明確な真実を言わないことによって敗戦が導き出されたと述べておられました。ここで使った日米戦争という言葉は日本国民が使う言葉です。歴史的、思想的な問題とすると、大東亜戦争という名称を使っています。これを使うと、アメリカからは非難されます。アジアの解放という理念を言ったものではないか、それは侵略戦争を美しくするものではないかということです。中国にとっても大東亜戦争というと侵略戦争があったわけで、その言葉を使うのは、相変わらずナショナリスト、右寄りの人ではないかと。大東亜戦争とは、対アメリカの戦争であると同時に、日中戦争、中国との戦争を両方含んだ形で、1941年(昭和16年)大東亜戦争開戦後に大東亜戦争と名付けました。これはイギリスと戦争が始まるが、日中戦争を含めて大東亜戦争と呼ぶということです。結果として、この言葉を使えば、アメリカにも負けたが、中国にも負けたという歴史認識となります。日米戦争、太平洋戦争だと、アメリカと戦ったということになります。戦後、アメリカの指導によって太平洋戦争とされ、大東亜戦争という言葉は禁止された。アメリカと日本の戦いでアメリカの民主主義が勝ったという認識にさせられている。このため若い人は、中国との戦争で負けたという認識を持たないようになります。こういうことを民主党で教えています。このアジアフォーラムでは、東アジア共同体と言ってきました。最初のころは、アジア共同体というのは空無であると言われました。アジアでの文化的共同性や日本中国だけでなく、アジア諸国に共通するところはあるのではないかと言われます。日本もインドネシアも宗教戦争が無かったではないかということです。イスラム、ヒンズー、仏教、キリスト教があったにもかかわらず宗教戦争は無かったのです。アジアの文化的背景があるのだということです。また、東アジア共同体といっても民主主義国の日本と共産党一党独裁である中国が同じ東アジア共同体などと作れるはずがありません。政治体制が違うのだからということです。これは日本人からも中国人からも言われます。例えば、2000年前の孟子の古典では、一番政治で大切なのは民を大切にするということです。天子は民から信を得られます。そして天子になれる、と書いてあるのです。これは民主主義体制ではないが、民主主義思想そのものではないかと私は言いました。共産党がたとえ一党独裁をとっていても、民から信を得られなければ天子になれないということです。
日本と中国が東アジア共同体という構想をつくるにあたっては、中国、日本という国々がこういう東アジア共同体の可能性を考えるというのが、アジアの未来を考えることになります。日中が連携してアジアの復興をなすという孫文の思想ではないかと思います。民主党政権の中の首相も仙谷由人さんも言っていることですが、今年は辛亥革命100周年です。日中が連携するという状況が当時はありました。その原点を今見直すべきです。その4年後には対華21ヶ条要求で帝国主義的な行動をとるようになっていきました。そうして日本は失敗の歴史を歩むようになります。ここから間違いを犯すことによって、中国は反日ナショナリズムが盛んになり、毛沢東たちが学生として出てくる流れになります。日本の侵略政策は間違っているということです。アメリカにも利益をよこせということで認められないということで出てきたのがアメリカです。この時に、中国とアメリカが手を組むという大東亜戦争の構造が現れてきました。今年は、辛亥革命100年の年です。来年は中華民国設立100周年です。アジアとの戦争、中国と戦争をしたというアジア重視の考え方が必要です。日本の開国、黒船は西欧へのものです。この第3の開国においてはアジアのほうに開国しています。それはFTAの問題にも重なってきますが、日米同盟第一主義ではなく、アメリカとどう対処していくのかを考えてみたり、アメリカの方も自主防衛を考えるのは当然です。しかし、一刻で防衛を考えられる世界情勢ではありません。アジア重視といいつつ、日米同盟を堅持するということです。難しいが考えていく必要があります。これは一昨年、北京大学でも強調しまして、中国の学生の人からも考えていったほうがいいという流れになってきております。ここで、将来のアジアのためにどういう方向に歩んでいったほうが良いのか、ということについて、このフォーラムが何をやっていくべきなのかについてお話をさせていただきました。ありがとうございました。
カテゴリ: 22日全体会議
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