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11月2日午後に開催されたメディア対話分科会においては、全体の議題を「メディアの責任、国民の相互信頼の強化」と設定し、前半部では「日中共同世論調査に基づく議論」として議論が交わされました。前半部には日本側パネリストとして下村満子氏(前経済同友会副代表幹事、ジャーナリスト、元「朝日ジャーナル」編集長)、高原明生氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、松本盛雄氏(在瀋陽日本国総領事)が、中国側パネリストとして王安琪氏(雑誌『求是』国際部主任)、胡俊凱氏(『瞭眺』周刊社副総編集長、『環球』雑誌社執行総編集長)、楊暁氏(遼寧師範大学教授)が出席しました。
基調報告は言論NPO代表の工藤泰志と程曼麗氏(北京大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院副院長)が行い、司会は国分良成氏(慶應義塾大学法学部長、教授)と陳菊紅氏(騰訊ネット総編集長)が務めました。
最初に程氏が基調報告として、世論調査の分析報告が行われました。日中両国の将来については日中ともに楽観的に見ている人が増え、両国の国民は互いを重要な国として位置づけているだけでなく、今年の調査では、民間交流について両国の国民が高く評価していると述べた上で、中日関係はここ数年良い方向に進んでいるという中国側の判断を示しました。
続いて工藤が基調報告を行い、その中で日中の政府間関係が改善しているにも拘らず、依然として相手国に対する互いのイメージが改善していないことを指摘し、その原因は「中国は日本を『過去』で見ているのに対して、日本は中国の『今』と『これから』を見ているからではないか」と述べました。その上で、「互いのイメージの改善が限界にきている今、どのように互いのイメージの問題を解決すべきか」とパネリストに対して問題提起しました。
まず中国側の黄氏が発言し、「メディアの責任は強めるべきだが、中日関係を全てメディアのせいにするのは根拠が足りない」と述べました。
下村氏は、世論調査で日本が軍国主義と見る中国人が多いという結果を受けて、過去のことばかり議論するのは非生産的であり、若い世代が次のアジアを作っていくには未来志向で考える必要があると述べ、さらに互いの誤解を解くために「日中双方のメディアが日中両国の一般国民の共通テーマを取り上げるようなジョイントプロジェクトをやってはどうか」と提案しました。
次に、王氏は「やはり相互理解と直接交流が不十分なのではないか」と述べました。
松本氏は、中国の多くの学生と接したという自らの体験を踏まえて、世論調査は結果がその時期に起こった出来事に非常に左右されやすいことに注意すべきだと述べ、また、やはり直接交流が不足しているのでそれをビザの取得を容易にすることなどによって交流を促進することが必要だとも述べました。さらに、「日本の方が、『中国が過去にこだわっているのではないか』と疑いすぎて、交流できていない面もあるのではないか」という指摘をしました。
胡氏は日本側の意見に対して、中国人の発想は過去にではなく未来に世界に向かっていると反論し、「中国のメディアはここ数年、相手の立場に立って考えることと、問題に真正面から答えることに関して努力してきた」と付け加えました。
高原氏は「相手の立場にたって考えることは大切だ」と胡氏の意見に賛同しましたが、その後、中国側に対して、日本が安保理常任理事国になることを望んでいるのは、日本が政治大国になりたいからではなく日本の国連への貢献に対する評価として求めているだけであり、日本人と中国人の価値観は違うということをわかって欲しいと伝えました。また、日本側に対しては、歴史教育をしっかりすべきだということと、国際問題に関するメディア報道が少ないために日本人の国際感覚が養われないというのは日本が自己批判すべき点であると主張しました。
楊氏は教師の立場から「教育はソフトなメディアである」と述べ、両国間で幅広い交流が必要であると訴えました。
その後、質疑応答が行われ、胡氏が「中国人の多くが日本を軍国主義だと認識している」という調査結果に対し、事実と異なるのではないかと疑問を呈しました。これに対し、程氏は、中国は過去で日本を見ていることはなく、この結果は心の傷を表しているのであり、心の傷は遺伝するものではないかと述べました。
前半の議論はここで終了です。15分の休憩をはさみ、後半に移ります。
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