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国分良成 慶應義塾大学法学部長・教授
1981年慶応義塾大学大学院博士課程修了後、同大学専任講師、助教授を経て92年より教授。03年同大学東アジア研究所長を経て、07年より現職。この間、ハーバード大学、ミシガン大学、復旦大学、北京大学、台湾大学で客員研究員を歴任。主な著書に「中国の統治能力―政治・経済・外交の相互連関分析」(慶応義塾大学出版会)など多数。
すでにこの「東京‐北京フォーラム」も4回目を迎えます。日中関係が低迷していたときにスタートしたこのフォーラムの場において、2006年、当時の安倍官房長官は、「日中両国は、政治問題を経済関係に影響させてはならず、「政治」と「経済」の二つの車輪がそれぞれ力強く作動し、それが結果として日中関係を更に高度の次元に高めていくような関係を構築していかなければならない」と対中政策のビジョンを語られたわけであります。私はちょうどそのとき総合司会をしていましたが、その場でそうした話を聞いて驚いた記憶があります。このことをうけて、中国側はこのフォーラムを非常に重要な場であると位置づけ、第3回フォーラムは中国側の力の入れようが相当変わりました。日中関係そのものの改善の中で、この言論NPOの活動は様々な役割を果たしてきたと思います。
ただ、日中関係は政府間においてはかなり進展しましたけれども、まだ基礎は十分ではありません。何かのきっかけで急激に悪化する可能性は否定できません。ですから、この対話を継続し、さらに発展させる必要があります。また中国側の方もこうした対話の場を非常に重要視しており、同時に対日政策においても中国側はすでに対日協調方針へと舵を切っています。そういう状況ですので、このフォーラムは中国にとってもひとつのメッセージの場となるだろうと我々も期待しています。
最後に、中国という存在がますます大きくなっているのはご承知のとおりですが、中国が転換期にあることもまた事実であります。まもなく中国でオリンピックが開催されますが、すでにオリンピック開催以前から、バブルは崩壊しつつありますし、株も半分くらいまで暴落しています。オリンピック以後という予想だったのが、すでにこのような問題が起きています。中国の格差問題も深刻で、国内体制をどう転換させるか大きな曲がり角にきているのです。またエネルギー資源を求めた中国の積極的なアフリカ進出などは、中国がグローバルな問題となっていることを示しています。そうした状況の中で、中国は日本の重要性を認識したわけでありますし、我々も中国の重要性を認識していますので、議論すべきところは議論し、主張すべきところは主張しながらも、協力し合えるところはどこにあるのかということを探っていく、そういう場にしていきたいと思っております。
第4回の「東京‐北京フォーラム」も、非常に重要かつ意味のある場になると期待しています。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中) また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。