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【メディア対話】後半 / テーマ:両国民に必要な相互理解と相互尊重

 メディア対話後半は、「日中両国民の"相互尊重"をメディアは、どう向上させるか」をテーマに議論することになっていましたが、小倉氏が「日中双方のメディアとも、島の話の報道を一切止め、もっと重要な問題を取り上げたらどうか」と挑発的に語りかけて始まりました。

 さらに「日本のメディアは大国・中国ばかり報道しているのではないか。中国人一人ひとりは何を考えているのか、そういうことがどれほど報道されているか、"中国"と"中国人"のイメージは違うはずだ」と双方のパネリストに問題提起しました。

 加藤洋一氏(朝日新聞社編集委員)から「尖閣問題一色は確かにおかしい。島の問題も中国人の生活も相対化することで、新たな視点が生まれてくるのではないか」と声が挙がりました。中国側からは、「日本には北方領土もあり、領土問題を報道しないわけにはいかないだろう」とした上で、「領土問題によって中日関係の将来を悲観的に見ずに、芸術面などこれまでに展開されてきた、様々な民間交流を忘れてはならない。歴史にはこだわらないが、それも忘れるわけにはいかない。相手の立場になって考えることが重要であり、それが両国関係の改善につながる」との発言がありました。

 さらに中国側からは、太平洋戦争時の侵略行為を、日本の教科書問題とからめて「日本の学生に対して、どのような教育をしてきたのか」との質問もあり、外交官時代、教科書問題を担当したことがある小倉氏は、「教科書問題は大変、難しい。根本的には日本人が日本の歴史をどのように見るか、の問題であって、それが明確には示されていない」と応えました。会田氏は「日本でも侵略はよくなかった、という教えもあり、いろいろな教育法がある。日本の近代化のネガティブな面もあった。しかし、日本と中国は1945年以降、冷戦体制で二つに分かれながら、今では世界2、3位の経済大国であり、アジアのサクセス・ストーリーである。体制は違っても、それを乗り越えて経済交流で協力してきた。これは冷戦下では大変なことであり、日中両国が一緒になれば、大きく発展できるという両国の優れた指導者たちの思いがあったからだ。東南アジアも米国も、日中は仲良くなければ困る、という立場であり、日中関係が止まれば、世界が止まるようになっている。今や日中関係は"世界の共有財"であり、小さな島の問題で、こんなにも大切な関係を崩してはいけないことを念頭に報道にあたるべきだ」と強調しました。

馬為公氏(中国国際放送局総編集長) 一方、馬為公氏は「中日のメディアに共通しているのは、私たちの報道が世論に影響していることだ。今回の世論調査では中日双方で相手国に対し、90%もの人たちが良くない印象を持っていることに、とても驚いている。その現状は私たちが報道した結果なのだ」と率直な思いを述べました。「相手国の理解について、メディアはとても大切な意義を持っている。文化交流イベントもメディアの役割であって、交流の場を作ることが大事だ。相手国への影響ということで、私たちも責任を負っている」とこれまでの経験を踏まえて話しました。

 これを受けるかたちで、小倉氏は、メディア対話の中に、人民日報といった一般紙だけでなく、女性誌、ファッション誌も参加させてはどうか、また、政治、経済、安保などのほか、文化、スポーツ、観光などについてフォーラムの中で話し合ってもいいのではないか、と提言。また、日中間で、社会的弱者の対話の場を考える必要があり、小さなことでも、心をうつ話を広く伝えるべきで、両国民の間に友情を作りあげてもらいたい、と双方のメディアに要望し、「島の問題も大きいが、人口動態、女性の活力登用など日中共通の問題を取り上げることで、双方のメディアは協力していけるのではないか」と期待を示しました。

里丈氏(中国日報社アメリカ支局総編集長) また、中国側の司会を務めた里氏は、「昔、胡耀邦先生(元総書記)が日本人青年3000人を、一緒に"共同の未来を築こうよ"と友好の船で中国に招待したことがあった。非常に懐かしい話だが、はるか遠いことのようで、あれは本当のことだったのか、とも思う。ともに将来に目を向けて議論の場を作ることこそ、我々中国側が意識していることである」と今回のメディア対話を総括しました。

 
 
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カテゴリ: 記事