. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 【発言録】 1日目 全体会議

【発言録】 1日目 全体会議 page 1

 

発言録 1日目 全体会議1
司会
国分 良成氏(慶應義塾大学法学部長・教授)

 

 おはようございます。只今から、第6回東京・北京フォーラムを開催致します。私は、全体会議の総合司会を務めます、企画委員長国分良成と申します。第6回東京北京フォーラムは、本日と明日の2日間で開催されます。第1回当時は日中関係が厳しい状態でした。このような現状の下、民間の有識者が民間の立場から日中関係の改善を行おうとこのフォーラムを開催してきました。2005年から今回まで開催されてきた間に、日中関係は新たな段階に入りました。二国間中心主義から多面的な関係、そしてアジア・世界を重視する戦略的互恵関係へと変化しました。このような日中間の関係発展に言論NPOは貢献してきたと自負しています。

 それでは、まず日本側から挨拶をしたいと思います。安斎さん(株式会社セブン銀行取締役会長)宜しくお願いします。

発言録 1日目 全体会議2
日本側主催者挨拶
安斎 隆氏(セブン銀行代表取締役会長)

 

 おはようございます。主催者として本日開催できることは喜びに耐えません。関係各位の皆様に心から厚く御礼を申し上げます。

 東洋の奇跡と呼ばれた、日本の高度経済成長から、僅か20年ほどで中国が高度経済成長を果たすことができたのはどうしてでしょうか。私が考えますところ、第一の視点は世界及び周辺諸国で平和が維持でき、先進諸国の技術革新を習得できたからだと思います。そして世界全体での水平分業によって効率的な生産物の調達が行えるようになったことがあると思います。アダム・スミスは、「国富論」の中で分業によって経済規模の拡大、生産力が高まると述べていたように、これまで世界は分業による効率化が更なる高所得を生み出す好循環によって支えられてきました。しかし、現在世界は米国発の経済不安の中にいます。欧米は、雇用問題などを抱え、それに対応した金融緩和は政策効果をもたず、ギリシャ問題のように財政赤字問題も顕在化してきています。そして、欧米の有識者の中には、このような現状と90年代の日本を比較し、「日本化」を指摘する方もいます。

 私は、景気悪化が起こると財政支出と金融緩和で対応しようとするがために、逆に経済自体の自律性を失ってしまったことによって、このような現状に至ってしまったのだと思っています。政策対応が八方塞がりとなってしまったことから、自国の政策を優先する保護貿易政策をとろうとしている国もあります。こうした動きの拡大は、必ず将来の経済発展を阻害し、経済を萎縮させます。また、ナショナリズムに扇動され混乱するのも阻止されねばならないと思います。

 

 国分氏(司会)  中国政府の代表挨拶を朱霊氏より宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議3
中国側主催者挨拶
朱霊氏(中国日報社総編集長)

 

 まずは、主催者側のチャイナ・デイリーと言論NPO、そして、パネリストの皆様に感謝を申し上げます。このフォーラムは、2005年から今年まで5年間成功し、中日間の重要な民間交流の場となっています。今年のテーマは「アジアと日中の貢献」という、両国政府と人民の共通の希望を反映しました。

 近年、両国の首脳交流は頻繁になり、新しい成果が多く出ています。我々中国政府は日本政府と共に努力して戦略的互恵関係をより発展させたいと考えております。

 尊敬する福田様、仙谷様、加藤様、安斎様、李様、趙様、陳様、ご在籍の皆様方、本日東京‐北京フォーラムに参加してくださった皆様、そしてメディアの方々、社会の方々、私たちのパートナーである言論NPOのご尽力に感謝を表したいと思います。

 東京‐北京フォーラムは2005年の最も寒い冬の時期に開催され、今年までは6回も開催されました。喜ばしいことに2006年に両国の間に温家宝首相による「春の旅」などで新たな転換が伴ってきました。現在に至り中日関係はより健全な関係に入りました。さらに長期的な友好関係を続けるためには、メディアの力も欠かせないと思っております。今回のフォーラムでも、中国側は新聞やインターネットやケータイなど様々なメディア手段を使い、より求心力があり権威のある中国メディアで世界にこのフォーラムの実情を伝えたいと思います。

 今まで、中日メディアは報道をする時に良い面しか伝わらないことがあります。しかも、両国国民は主にそれぞれの主流メディアを信じる傾向があります。ですから日中友好のためにも、より客観的なメディアが必要だと考えられます。両国関係は50年の難しい状況にありましたが、文化や物の見方の違いなどで、矛盾を生ずることが避けられません。メディアはその矛盾を報道することも大事であります。そして、真相は確定できない時には、適当に報道することはよくないです。双方の主流メディアはより客観的に報道をすることが大切だと考えております。

 客観的かつ公正な報道は中日関係と民間交流を深めるためでもあります。私は、この東京‐北京フォーラムが日中友好や日中関係において着実な発展の中、継続した努力と貢献が行われますよう願ってやみません。


 

 【発言録】 1日目 全体会議 page 2

 

国分氏(司会)  ここから各政府を代表して、政府の挨拶を行います。仙石氏は東京‐北京フォーラムに古くから参加をなされてきた友人でもあります。それでは、仙石内閣官房長官、宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 2
日本側政府挨拶
仙石由人氏(内閣官房長官)

 

 皆さん、おはようございます。仙石由人でございます。東京‐北京フォーラムは本日で第6回を迎えましたが、会場を見回してみると、これだけアジアや日中の未来に建設的な討議をしようという人が増えたということに感慨を受けました。

 このような現状に心からお喜びを申し上げ、特に、開催の主催者などに敬意を表します。そしてフォーラムが成功することを期待しています。

 日中関係は日本にとって最も重要な二国間関係の一つです。特に、経済面では最も貿易量が多く、内容の面でも進化が深まっています。また、経済、環境など幅広い分野で対話が進み、戦略的互恵関係を強化するべく民間を含めて様々な協力が行われています。その中の安定的な礎の一つとしてこの東京‐北京フォーラムが機能していると考えています。この東京‐北京フォーラムはまさに、近年の日中関係を象徴していると考えています。

 日中両国は地域の発展について責任を持っています。今後とも互恵的な協力関係を強化して地域に貢献することが重要であると考えています。日中両国は特に中長期的な関係を構築してゆくことが求められています。このような観点から日中両国は二国間のみならず地域、グローバルについて対話をしてゆくことがこれからも必要だという認識です。今回の東京‐北京フォーラムのテーマである、「アジアの未来と日中の貢献」の観点から日中関係を検討することは日中両国、地域、さらに世界の発展・平和に繋がると思います。

 最近の日中関係は、昨年の政権交代後も様々な政府間対話を政府間で行ってきました。2010年になりましても「戦略的互恵関係の構築」という戦略の下にハイレベルな会合がもたれてきました。温家宝首相の訪問や先日の岡田外相の訪中など、活発な議論の場がもたれています。この中で、食品安全問題、東シナ海問題、防衛協力など様々な点で日中両国の関係を進展させ、そして着実な成果を出してきたと考えています。

 さらに、私は環境、防災、感染症などでも日中両国で共同プロジェクトに着手する時期に来ているのではないかと考えています。これらの協力を進めてゆくことは将来的には東アジア共同体の基礎となっていくと考えております。日中両国は共に成長力が潜在的に存在する場所であります。日米同盟を基礎に、東アジア共同体を構築していくための様々な取組を現在進めています。

 また、世界的な金融危機の影響の中でも、中国は発展を続けています。このような現状の下、日中両国は国際金融政策における協力や環境問題などで世界経済に対して重要な責任を負っています。これらは我々の世代に対してだけではなく、将来世代に対しても有効な政策を行う必要があります。そのためには、中長期的な日中関係が必要です。特に、相互理解について考えることが必要だと思います。現在、4000名もの青少年交流を進めていますが、これを6000名に増やし、将来の世代の相互交流の発展を図る予定であります。しかしまだこういった政策を推進しても両国の国民の中には相互不信のようなものがあります。先日行われました言論NPOとチャイナ・デイリーの共同世論調査によると、相互の国民がお互いに不信感を抱いているということがわかります。これからは、国民レベルでの更なる信頼を深めることが必要なのではないかと思い、その一助としてこのフォーラムで活発な議論が行われることが期待されます。

 最後に、このフォーラムを通じて相互信頼・相互理解を深めることを期待して私の挨拶を終わらせて頂きます。

 

 

 【発言録】 1日目 全体会議 page 3

 

国分氏(司会)  それでは、続きまして中国側程永華大使(中華人民共和国駐日本国特命全権大使)宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 31
中国側政府挨拶
程 永華氏

 

 ご来賓のみなさま、今日のご来場ありがとうございます。今回、第6回のフォーラムが日中関係だけでなく、アジアの発展と繁栄について真剣な議論が成功できることを心より期待し挨拶を申し上げます。

 2005年に、私本人はこのフォーラムの立ち上げに参加しました。中日間が共に関心のあることを真剣に議論をすることで、中日関係に大きな貢献ができました。中国と日本は近隣国であり、両国の歴史も長く、中日友好は言うまでもなく重要であります。中国は改革開放で独自の道を切り拓き、大きな変化をもたらしました。そして、日本は中国の近代化に対して大きなご協力をして下さいました。

 実際、中日関係は戦略的互恵関係に置かれていますが、これは確かにそうだと私は思っています。なぜかと申しますと、中日友好は両国の利益になるからです。両国友好はアジアを振興させるためにも重要な役割があります。日中両国は「和をすればともに利益を得、もし戦争をすれば、ともに損をすることになります」。これはアジア全体にも影響を与えます。中日関係は人文交流や経済貿易など、様々な分野において日中間だけでなく、アジア全体の交流もますます増えるでしょう。現在、国際情勢は深刻な状況の中、中日両国は新しいチャンスに直面しています。友好関係を継続させていくためにも、多くの課題にも直面しています。

 まずは、政治面に関しては相好信頼関係を築くためにはハイランクの直接対話などがより行われることを期待しています。そして、多くの分野において協力関係を結び、省エネ、環境、防災などにおいて、両国の新たな協力パターンを世界に示すべきです。さらに、文化交流面において、文化や地理的な近さを利用して両国の間に意義のある基盤を築くことが大事です。

 次に、中国と日本の間にFTA協定などに関しても、東アジアでの協力を推進すべきだと思っております。

 中国と日本は隣国で、パートナー関係をより高いレベルに発展させるためにも、本フォーラムで率直に話し合い、お互いに刺激を与えることを期待しております。

 

国分氏(司会)  続いて、基調講演に入りたいと思います。まず元日本国内閣総理大臣福田康夫先生宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 32
基調講演
福田 康夫氏(元内閣総理大臣)

 

 今日は大勢の皆さんが集まり盛大に行われますことを、お喜び申し上げます。

 先日、私は上海万博を訪れまして、中国館、日本館の人気があることを知り喜びました。そんな、上海万博は現在、来場者数が4100万人に至っているそうであります。

 さて、このフォーラムは第6回目となりまして日中の重要なチャネルとなってきており、共同事業の一つの成果だと考えています。同様に、言論NPO、チャイナ・デイリー双方が行っている世論調査も重要な調査と位置づけられており、学会やマスコミなど各界から評価を得ております。

 日中関係をどうするかは官房長官時代、私の頭を悩ませたことの一つであります。そんな、日中関係が落ち着いたのは安倍元首相の訪中の時からであります。これには安倍元首相、胡錦濤主席両者の大きな貢献がありました。私が訪中した際は、具体的方向と内容を確立することが重要で、それはどちらかというと内向きになりがちな両国の関係をアジアへ向いた開かれた関係にすることが重要でありました。

 このような、戦略的互恵関係の強化とは具体的には、(1)互恵協力の強化、(2)日中の防衛交流や青少年4000人の交流などの相互理解の促進、(3)地域間の協力、(4)東シナ海問題の早期決着などであります。これらのうち重要な問題は、いくつかは解決され、それ以外も前向きに進んでいるところであります。例えば、日中の防衛交流については自衛隊が中国への訪問を戦後初めて実現しました。地域間の協力として気候変動は現在進行中で、東シナ海問題は最近交渉が再開されたところであります。これらの問題は国民の間のイメージ形成に影響を与えるだけに重要であります。今後はいかに制度化し、継続させていくのかが重要であると思います。

 東京‐北京フォーラムは6回目でありますが、まだ、相互不信は緩和されておらず、改善していかなければなりません。先日行われた世論調査の中で、前向きな成果が現れているのは、改善へ向けての日中の協力の成果だと思います。日中両国の関係発展は、世界の利益になりますが、関係をさらに発展させようとするときに重要な点は、政治的なリーダーシップで、世論に惑わされずに進むことが大切であります。

 一方、経済に目を転じてみると、世界経済は現在苦境に立たされており、日本も経済だけではなく政治も混迷を極めています。これに対して中国は、問題はあるものの今年世界第二位のGDPが期待されているように経済運営は安定しております。今後も世界の成長センターとして成長していくでしょう。こんなときに心に留めてほしいのは驕りを感じないで欲しいということであります。日本はかつて日露戦争の勝利で国としての絶頂期を迎えたことがあります。しかし、その後に第二次大戦で破局への道を歩みました。その背後には日本には「驕り」があったのだと歴史は教えてくれます。中国は大国への道を進んでいますが、アメリカや日本がかつてそうだったように大国は指弾を受ける運命にあります。そのような時には大国として透明性をもって国際社会に説明することが必要ではないかと感じています。

 最後に私から日中関係に関して3つの提案をしたいと思います。一つ目は日中両国ともに大局的観点に立ち、主張すべきところは主張し、譲るべきところは譲る等折り合いをつけることであります。相手の心に思いを馳せ、解決を図る、譲り合いの精神が日中両国には必要なのではないかと思います。二つ目は、日中を単純に比較すべきではないということであります。両国は、国土、経済力、価値観などあまりにも異なる点が多いです。ただ単純に、統計上の数字を指摘するだけでは、両国の感情を逆なでするだけです。日中の真の意味を踏まえた両国の関係を捉えるべきではないでしょうか。三つ目は、東京‐北京フォーラムのような非国家の繋がりを広げるべきであります。日中両国の関係の強化には国家の関係だけではなく、青少年交流など関係の深化が必要であります。若者の交流は思い出となり、やがては両国の関係にとって良い効果が出るのではないかと思います。

 日本と中国の関係は強大な経済大国で、改善の方向に先導することは両国の使命であります。今後とも、両国の関係の発展につながる議論が進むことを期待し、挨拶を終わらせて頂きます。

 


【発言録】 1日目 全体会議 page 4

 

国分氏(司会)  続きまして、王晨氏、宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 4 1
基調講演
王 晨氏(国務院新聞弁公室主任) 

 

 ご来賓のみなさま、ご在席の皆様、今日第6回東京‐北京フォーラムに出席ができ大変嬉しく思っております。

 このフォーラムは民間交流の窓口として有識者が集まり、両国の政治信頼、経済貿易、環境安全などについて多くの提案が出され独特な役割を果たしています。

 今回第6回のフォーラムのテーマは「アジアの未来と日中の貢献」でありまして、これは両国が手を携えながら、アジアのために貢献することを目指しているという意味もあると思います。中国と日本は一衣帯水の近隣国で、お互い学びあい、それぞれの発展と進歩を促しています。周恩来首相は「中日関係は2000年の友好、50年の不幸」と仰いました。各界の有識者の努力により2008年に大きな成果が見られました。ややマイナスなこともありますが、全般的によくなってきたと考えております。

 ここに日中関係について、重要な点を4つ挙げたいと思います。

 1つ目は、互恵関係と相互信頼関係です。2006年に政治関係が改善され、胡錦濤さんは2008年5月に訪日し、それは中日関係に大きな歴史を開きました。その時に、お互い協力パートナーになり、お互い平和発展の指示を下すことに合意ができました。これは大きな成果であり、中日関係の大きな原動力でもあります。

 2つ目は、経済貿易協力です。日本は中国の最大の貿易パートナーであり、2008年ぐらいには2663億ドル、2009年に世界不況の中、マイナス成長でありながら2288億ドルも貿易額がありました。そして、これからは、金融、情報、環境、防災など健全な都市建設など新たな協力分野を開拓していくべきだと考えております。

 3つ目は人的交流です。日本と中国両国の間に、文化交流やスポーツ交流、青少年交流は盛んに行われています。例えば、日本文化センターや中国文化センターなどがあります。又、中国では日本語能力試験の受験人数も多いです。そして、両国間の地方友好都市の間の交流はすでに200を超えています。

 4つ目は世界平和に大きな責任があるということです。インフラ整備や国際金融危機、気候変動などでも両国の国民、ひいてはアジア太平洋と世界のためにも、中日友好関係は重要であります。

 現在、中国は独特の発展への道を開き、2009年の国際金融危機に全面的に対応したのもありGDPは34兆570億元です。

 しかし、中国はいまだに世界最大の発展途上国であり、不均等問題や、沿海地区ギャップや、農村地域問題など様々な社会問題に直面しています。また一人当たりの所得はさらに厳しく、十数億の人に全て利益をもたらすためにまだまだ努力をする必要があります。

 現在中国では科学的発展モデルを求め、内需外需、とくに国内需要の拡大を目指しています。そして、第1、2、3次産業をともに発展させ経営のイノベーションなどを進めています。

 中国では発展を優先する方針で、その中で平和的発展は中国人の信念でもあり、平和的な社会作りは近代化建設の道にも欠かせません。その中で、中国は世界貿易成長のための貢献をしました。中国は世界最大の新興市場として、世界貿易に多くの利潤を与えています。この責任のある発展国として、世界のために貢献して、建設的な役割を果たすことを目指しています。

 また、中国と日本両国の国民感情の繋がりに関して、中日のメディアは使命感と責任感を持たなければなりません。良い世論をつくるという社会的責任を持つことが欠かせないと思います。故に、メディア交流を全面的に推進することも大事だと考えております。メディアによる積極的な交流は両国の友好関係にも良い影響を与えられるので、中国政府はその重要な影響を重視しています。温家宝さんは去年訪日した時に、日本メディアと意見交換をしました。中国に対し、客観的かつ全面的に日本のメディアは多く取り上げているが、社会や軍事面などに注目しています。一方、中国のメディアは人的協力など世界会議などに注目している傾向があります。これからは両国のメディアの交流を進めるために、CCTV(中国中央電視台)で日本語のチャネルが放送する、人民中国という新聞の日本語版も出版するといったことを実施していく方針です。

 そして、両国間の実務レベルでの対話も重視されるようになり、フォーラム、シンポジウムなど多く開催されています。その中、第一回メディアサミットも開催されました。

 中日関係を推進するために、真剣に、積極的にこういったことをやるべきだと思っております。両国国民の間の友好や理解、そして心の距離を縮めるため、両国メディア関係者の間にも理解とお互い信頼しあう環境を作ることが大事です。温家宝さんは日本の社会科学の研究者を中国に招き、アニメフェアを開催するなど提言をしました。そして福田さんは700人の中国メディアを日本に招くというお話もありました。

 日本と中国は近隣の国で、両国友好は根本利益に関与し、様々な協力を深まることが大事だと考えています。あと2ヶ月ぐらいで万博が終わりますが、主催側の中国としては1200人の日本青少年を中国に招きましたが、日本のメディアの方々も非常に歓迎します。

 

国分氏(司会)  ありがとうございました。それでは、経済界の代表として三村明夫様(新日本製鐵株式会社代表取締役会長)宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 4 2
基調講演
三村明夫氏(新日本製鐵会長)

 

 お招き頂き、どうもありがとうございます。私は鉄鋼業界の人間として様々な経験があります。この経験から本日は、アジア経済と自国の成長の視点を下に「国力」と「国益」をキーワードにして講演を行いたいと思います。

 まず、国力の視点でありますが、国力を考える場合二つの指標に着目すべきであると思います。一つ目が、「一人あたりGDP」というものです。これは、国民一人あたりの豊かさを示すものです。現在の中国の「一人あたりGDP」は1960年代の日本と実は同じ数字です。これは日本やヨーロッパの関係者には信じられない数字です。この背景には農村に富が行き渡っていないことがあるのではないかと思います。これからの中国の内政課題の一つは、経済成長の果実を国民全体がいかに享受してゆくことかであると考えられます。

 もう一つの注目すべき指標は、「GDP全体の大きさ」であります。マーケットの規模や防衛力などはこの「GDP全体の大きさ」に依存します。今年、中国は日本を抜き、世界第二位の立場に躍り出ることが確実視されています。さらに、たとえ現在の成長速度が鈍化したとしても、2030年前後には米国に追いつき、さらには追い越す可能性があります。中国は世界金融危機にもかかわらず、高い経済成長を維持し、世界経済に貢献をしてきました。このように、今や中国は世界有数の経済大国になっているのであります。

 次に、国益の観点から話を進めていきます。

 自らの国益を踏まえないで発言することは当然考えられません。自国民に配慮しないのはありえないことです。むしろ、自国の国益を踏まえない発言は周辺諸国からは異常に見えます。日本は自らの国益を考えない風土があります。ただ、その国益は一国のみでなく大方の国の国益であるべきだと思います。そして、国益は、交わります。程大使の言葉を引用すると、時間概念を入れれば、国益というのは共通・協力できる可能性を秘めています。これが戦略的互恵関係のベースになります。国益は相対的に変化し、対立点が生じます。政治は対立点を鎮めるべきです。民間も交流を進め、対立点の解消に進めるべきです。近時は、国益の考え方が複雑になっています。その中で、「開かれた国益」が重要となっています。中国は世界最大の鉄鋼産業国です。このような現状では、中国の行動自体が世界に影響を与えます。そのため、中国は何をなすべきか考えるべきです。自国の国益を考えるのは当然として、これからの中国は自国の立場をわきまえたリーダーシップをとることが必要です。このようなことを行わなければならない「開かれた国益」が必要だと思います。

 


 【発言録】 1日目 全体会議 page 5

 

国分氏(司会)  「開かれた国益」というお話が印象的でした。続いて、陳昊蘇氏、宜しくお願い致します。

発言録 1日目 全体会議 5
基調講演
陳昊蘇氏(中国人民対外友好協会会長)

 

 司会の国分先生、皆様、昨日の歓迎の際に私は5つの「大」を述べました。皆様のご発言を聞いていて、まさに私の言葉の証となっているのではないかと思っております。

 ここで、まず中日貢献とアジアに未来について私は3点ほど意見を述べたいと思います。

 アジア文明は人類文明の一番古い舞台です。アジアに文明が灯され、人類は文明の歴史を綴るようになりました。皆さんご存知のように、アジアの間での交流や中日間の文化交流などは昔から盛んでした。

 しかし、近代アジアの発展に大きなチャレンジが待っていました。植民地時代や帝国主義時代から始まったヨーロッパ中心主義の影響で、アジアは周辺化されました。しかしながらアジアはこの悲惨な運命を認めるわけにはいきません。そこでアジア復興運動が始まりました。例えばインドやパキスタン、北朝鮮、韓国はそれぞれ、自国が状況に恵まれ独立ができました。そして、日本はアジアの中で最も早く独立を実現した国で、アジアの復興に大きな貢献をしました。しかしながら、おかしいことに、日本は「脱亜入欧」を主張するようになりました。これは日本の発展を促しましたが、マイナス面も無視できないでしょう。日本はアジアを見下したことで、アジアの中で孤立してしまいました。ようやくヨーロッパの仲間に入っても、その中でアジアを代表することができませんでした。

 今のアジアは復興段階のなかにあります、その歴史的経験を総括し、力を尽くす必要があります。

 昔からヨーロッパは憂慮をして、ナポレオンが「中国は眠れる獅子だ」と言ったことがあります。これはおそらく中国だけでなく、アジア全体を指していると思います。彼はアジアの復興が好ましくないという考えだったと理解できると思います。

 しかし、これからの日中関係には、Win-Win関係を重視し、根拠のない脅威論をなくすことが大事だと考えています。

 アジアの輝かしい未来はアジアの人々の団結が必要だと考えています。アジアのためにも日中の友好関係は最も大事であり、金融危機をきっかけに日中協力はより進んできています。ただ、大事なことはこの友好関係が立ち止まってはならないことです。新たな協力分野を開拓し、より団結しなければならないと思います。同時に、謙虚にアメリカを勉強し、ラテンアメリカやアフリカとの協力も必要だと思います。

 実はアメリカなどはアジア内部でいろいろ紛争を起こさせる手段があります、しかし、これは愚かなやり方です。私は鳩山さんの「友愛」理念に賛同し、アジアの一体化のためにも大事なことだと思います。互恵協力を通し、友好交流を通し、中日関係を目標にするだけでなく、東アジア、西アジア、北アジア、南アジアを含めアジア全体も発展と大きな利益を与えられるでしょう。

 最後になりますが、もし皆様の中に上海万博にいらっしゃった方は感じたと思いますが、中国館はもちろんですが、日本館もとても人気があります。もしこれから万博にいらっしゃったら、中国館での「時を救った物語」はとてもすばらしいので、ぜひご覧ください。

 ご清聴ありがとうございました。

親カテゴリ: 2010年 第6回
カテゴリ: 発言録