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後半は、司会を工藤が務め、「相互理解を深めるため、平和を実現するために、日中の政治家は、どういうビジョンを持っているのか」とパネリストに単刀直入に訊きました。
石破茂氏は、「なぜ、日本はあの戦争に向かい、敗れたのか。なぜ、ナショナリズムが強かったのか。なぜ、文民統制ができなかったのか。国際連盟の決定を無視し、国際社会から孤立、世界に背を向けたのか」と疑問を投げかけ、私たちは「歴史をきちんと学ぶべきだ」と会場を埋めた人たちに呼びかけました。
一方で、中国に対しても、「今回の仲裁裁判所の判決を紙くずと中国は言った中国は、何なのか。また、中国の人民解放軍は共産党の軍隊なのか、国民の軍隊なのか」疑問を投げかけました。さらに、数日前に、中国の戦闘機が宮古海峡を初飛行したことについても、「かつてと違い、中国の飛行機も最新鋭であり、パイロットもエリートのはず。中国の国家の意思が利いていないとは考えられず、仮に利いてなかったら、もっと危ない」と述べ、お互いに軍事衝突することは望んでいないが、部分的にそのような行為があった時に、我が国がどのように対処していくのかということは極めて重要であり、国内政治のために、相手国の憎悪を燃やしてはならない。お互いに謙虚な姿勢で歴史を学んでいく必要があると重ねて呼びかけました。
この発言に趙氏は、「仲裁裁判は国連の裁定ではなく、領海、主権が出てくる問題への権限は持っていない。不公正な国際意見という声もあり、南シナ海の問題は、共通認識がどこにあるのかを改善して、お互いの不満を減らし、当事国の話し合いで解決する」と、この問題についての、従来の中国の姿勢を強調しました。
平和実現について藤崎氏は、「北朝鮮問題をコントロールできるのは中国であり、国際社会全体が中国の制裁に期待しているので、もう少し北朝鮮を強くツネってもらいたい。また、李白、杜甫の時代に比べて、最近の中国人は乱暴ではないか。"ゆっくり、静かに、おおらかに"対応態度が変わっていかないのか」と中国側に注文をつけました。
陳氏は、「AIIBと"一帯一路"のイニシアティブに日本は対抗姿勢を持っている。なぜ、参加しないのか」と日本側に疑問を呈しました。黄氏も、「AIIBとADBの関係は日米によるアジア金融構造に大きな変化を表している。中国には投資できる能力がある。従来の日米の投資構造は基準が厳しく、途上国のためにはならない」と話し、AIIBの必要性を強調しました。
大橋氏は、「AIIBと(日米主導の)アジア開発銀行はすでに協力を深めており、あとはAIIBが設立目的に合わせて、どのように発展させていくかだ。現時点では、日本や米国が加入する必要性を感じていない」と回答しました。
ディスカッションの後には会場からの質問に答える形で、趙氏が中国における歴史教育について、「中国では"反日教育"はしていないが、"歴史教育"は行っている。それも"歴史を忘れてはならない。しかし、憎しみを引き継いではいけない"と教えているが、政府の歴史教育が若者たちを教育する唯一のチャネルではない」と説明しました。
これに関連して、大橋氏は、「盧溝橋事件の博物館に行ったが、反日の気はしなかった。未来指向であり、展示のやり方を考えているのか」と指摘。さらに、仕事を通じて仲良くなった中国人に「戦争中のことをどう思っているのか」と聞いたら「未来に希望を持っていれば、過去には拘らない」と言われたことを紹介。「中国に領土的な拡張の考えはかつてなかったが、今は何となく感じるし、不信感がある。大国としての責任を中国に分かってもらいたい」との見解を示すとともに、中国の民主化はさらに進んでいくだろう、としてそうした民主化により、拡張主義が方向転換すればいいのではないか、と語りました。
陳氏は、「中国は断固として国連秩序を守っている。日本やドイツは常任理事国入りを目指しているが、日本は被害国と本当の意味の和解をできていない」と従来の見解を主張しました。さらに、「中国が宮古海峡を通過するとなぜ日本は緊張するのか。公海であり国際法に則った行動だ」と言葉を強めました。
また、会場からの「米大統領選のトランプ候補について、日本は外交戦略を持っているのか」との声には、石破氏が、「トランプ現象やサンダース現象の根っこは一緒。白人のブルーカラーの不平不満を集めている、その変容をどう捉えるか。同盟というのは、巻き込まれる危険と見捨てられる危険があり、日米同盟を利用されたら、たまらない」と指摘。そのうえで、「常にアメリカについていくという姿勢がいいとは思わない」との見解を主張しました。さらに藤崎氏は、「トランプ氏が大統領になったら、中国にとっては望ましくないのではないか。北朝鮮は、トランプ氏は現実的で柔軟性があると支持している」との見方を示しました。
最後に工藤は今回の議論を振り返り総括として、「日本に渡航経験のある中国人の58%が日本に良い印象を持っていた。また、中国の20代以下の青年たちは、インターネットを通じて日本のメディアを見ている。課題解決に挑む民間対話の重要性を評価する世論も高まっており、お互いが冷静になって解決策に向けて対話を行っていく、いい環境ができてきたのではないか」と将来への責任を口にし、ディスカッションは締めくくりました。
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